ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
石川遼と松山英樹はライバル“未満”?
渡辺謙が語った2人の「関係と立場」。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2014/03/06 10:30
練習ラウンドでの松山と石川は、どんな会話をしているのだろうか。2人の関係が「仲間」から変化する過程を見るのも楽しみだ。
フロリダの熱波に身を委ねながら、松山英樹と石川遼はせっせと汗を流していた。
ホンダクラシック開幕前の練習日。この数カ月で、2人がともに練習ラウンドを回る姿は見慣れた光景になったとはいえ、将来への野心でいっぱいの彼らが並ぶと、少なからず胸は躍る。日本では騒がしくなる外野を気にしてこんな共演が実現することはまずないだろう。そう考えれば、ちょっぴり贅沢なひと時でもある。
プレー中、2人は必要以上には言葉を交わさない。互いのボールが描く軌跡に目を凝らしたり、相手のクラブを手に取ってみたりはするが、ただ淡々と自分の準備を整えていく。攻略ルートを記したコースメモを見比べるのは、それぞれのキャディ同士の方が多い。
けれどなんとなく眺めているだけでも、2人の違いが見て取れるから面白い。
自然児のような松山と、マシーンのような石川。
意外に思われる方もいるかもしれないが、練習中により多く笑顔が見られるのは、圧倒的に松山の方だ。
「打てるところが無いよ! もう無理だ」なんてコースの難しさを嘆いてみても、口元では白い歯がのぞいている。周りとのお喋りにも奔放で、サングラスを付けて、外してと、せわしない。グリーンをチェックする時は、突然目つきを変えてボールを転がすのだが、それ以外では無邪気な自然児が、そのまま大きくなったようなのだ。
一方の石川は、緻密さを存分に漂わせながらコースを回る。
ヘッドスピードやスピン量を計測する機器を1ショットごとにボールのそばに置いて、スイングをチェック。通訳を介すことなく、現地の記者と一通りのコミュニケーションが取れるほどに上達した英会話でオーストラリア人キャディと静かに作戦を練っている。その姿はまるでスマートなマシーンのようだ。
その日、練習が終わりに差し掛かった16番ホール。ティグラウンドで関係者から「どっちから打つ? “先輩”から?」と声が飛んだ。
ツアーでの経験から言って、先輩はもちろん石川。けれど彼は「いや、もう先輩じゃないんで。両方、22になったから」と笑った。2月25日、松山の22歳の誕生日の1シーンだった。