野球クロスロードBACK NUMBER
ホームランから見放された2年間。
広島・栗原健太、豪打を取り戻せるか。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/03/04 10:40
全試合に出場した2011年には、17本のホームランを放った栗原健太。昨年、一昨年は出場試合数も激減している。自身のキャリアハイ、2007年の25本塁打を越えることはできるか。
昨季加入したキラの活躍で、一塁の定位置を奪われた。
追い打ちをかけるように、栗原の穴埋めとして6月途中からチームに加入したキラが66試合で14本塁打とある程度の結果を残した。栗原が守っていたファーストの定位置をほぼ手中に収めたのだ。
キラが広島の大きな戦力であることは間違いない。だが、長年にわたり赤ヘル打線を支えてきた主砲が復活しない事にはチームの底上げはなされないし、首脳陣だって手放しで喜ぶこともできないだろう。キャンプ中、少し苦い表情を浮かべながら話す野村監督の言葉が、そのことを物語っていた。
「いない間は(栗原には)チャンスもないし実績もない。当然、チームとしては補強をするわけで外国人を獲りましたけど、そのキラが結果を残しましたからね。栗原本人も、それを分かっているだろうし、覚悟を持ってキャンプに臨んでいると思います」
栗原の覚悟――。それは、彼自身の行動を見てもはっきりと認識できた。
三塁での起用は「スペアのスペアのスペア」だが……。
最も印象的なシーンを挙げるとすれば、'10年以来のサードを守った2月8日のシートノックだった。
3度のゴールデングラブ賞に輝いたほどのファーストの名手が、一度は「失格」の烙印を押されたサードに就く……。送球の際に右ひじへの負担も増すだろう。それでも、サードを守る。不退転の決意で臨むシーズンとしてはあまりにも明快な“決意表明”だった。
栗原はサードを守る意図をこう説明した。
「右ひじが気にならないように足を動かすことを意識して守りました。複数のポジションができるとプラスになりますし、サードを守ることでだんだん体が動くようになればいいかな、と思っています」
現実問題、今後栗原がサードを守る機会はほとんどないだろう。実戦ではDHでの出場がメイン。石井琢朗守備走塁コーチも、「ネットスローのフォームは健太が一番うまい」と守備を評価しつつも、このようにはっきりと明言しているくらいだからだ。
「スペアのスペアのスペアくらいでしか考えていません。不測の事態に備えてね。ただ、普段から体を動かしておけば全体のパフォーマンスにも繋がってきますから、サードを練習するのはいいことでしょうね」