スポーツで学ぶMBA講座BACK NUMBER
パ・リーグはなぜ観客が増えたのか?
顧客を魅了するイメージ戦略を考える。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/03/05 10:40
昨年のパ・リーグにおける千葉ロッテvs.東北楽天のクライマックス・シリーズ。立錐の余地も無いほどの観客がスタンドを埋め尽くした。
さて前回は、「魅せる」重要性について書いた。スポーツでもビジネスでも、顧客に大きなインフルエンスを与え、顧客がロイヤル化していくプロセスを促進するには、その製品・サービスについてどのようなパーセプション(認知)を顧客が持っているかが大きな役割を果たす。つまり、顧客は「どのように」魅せられているか、ということだ。
例えば「ナイキ」。
ナイキのイメージは、先駆者的、エッジの効いている、斬新、先鋭的などがあろう。ナイキは競合商品と明確に差別化したこのようなパーセプションを創り上げ、そして顧客からの支持を得て世界で売上を伸ばしている。
当たり前だが、パーセプションが創られればよいというわけではない。そのパーセプションがビジネス的に価値を生み出さないものであっては意味がない。つまり、認識はされているものの、その認識が、有意性や魅せることにつながっていない場合である。
一方、どんなパーセプションを創りだすのかを戦略的に考え、その認識を有意性や魅せることにつなげ顧客を魅了することができれば、ビジネスに大きなインパクトをもたらすことができる。
新たなファン層を獲得したパ・リーグの成功例。
パーセプションを有意性や魅せることにつなげている例を挙げてみよう。
スポーツの事例で言えば、パ・リーグなどが比較的巧みにパーセプションを創りだしたのではないだろうか。
以前のコラムで暗い、「酔っ払ったオジさんがヤジを飛ばす」などのパーセプションが創られていたが、スタジアムの改修や、数々のファンサービスなどによってそのイメージを変えている。暗くておじさん色の強いイメージがあるスタジアムに足を運ぶ人は限られるが、イメージを変えることにより、より多くの観客が足を運ぶようになった。
しかもこれが効果的だったのは、このパーセプションを今までのコアファンに創ったのではないからだ。パ・リーグにとって新しいファン層、つまり、スタジアムで過ごすこと自体に楽しさを見出す人々に創りだしたところが巧みである。