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高卒、大卒、社会人の割合で考える、
パの“成功法則”と、セの“反攻”。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/02/27 10:50
桐光学園からドラフト1位で楽天に入団した松井裕樹。今年ヤンキースに移籍したチームの大先輩、田中将大のように大きく成長できるだろうか。
「僕らの仮説では、投手は23~25歳がピーク」
こうしてスタメンと投手陣を組むと、高校卒のスケールの大きさがわかっていただけると思う。成功選手の数こそ少ないが、モノになったときの大きさは大学卒、社会人出身を凌いでいる。
男性週刊誌の取材で昨年暮れ、仙台市の楽天球団を訪れたとき、安部井寛・チーム統括本部長は「ピッチャーは高卒の選手のほうが、しっかり育成する仕組みができていれば長く活躍するので、評価が並んだら高校生でいこう、という話をしています」と、ドラフトにおける基本的な指名戦略を話してくれた。
インターネット上のウェブサイトで見た立花陽三・楽天球団社長の次の言葉も目を引いた。
「僕らの仮説では、野手は25~26歳、投手は23~25歳がピーク。極端に言うと、大学生のピッチャーはほぼ完成されていて、伸びしろがあまりないんです。ましてや大卒の社会人だとすでにピークにあり、そこからプロで育てるとなると、失敗した時のリスクがものすごく大きい。なので、年に1回しかないドラフトでは、基本的には高校生に投資すべきだというのが僕の考えです」(web Sportiva)
セは34人中9人、パは42人中15人が高校生だった。
私も両氏の意見にはその通りだと思う。
ただ、リリーフタイプの投手とチームリーダー的な野手は大学卒、社会人出身のほうが大成する傾向にあるので、求める選手像によって指名する選手が若干変ってきてもいい。個人記録に目が向きがちな高校卒選手に、リリーフ投手のような「自己犠牲」精神は求めないほうがいいということである。
高校卒は大成までに3、4年かかるのが普通なので、弱体投手陣を抱える球団ほど大学、社会人の即戦力を求める傾向がある。これらのことを踏まえて、昨年10月に行われたドラフト会議を振り返ってみよう。
セ・リーグ各球団が指名した34人の中で、出身別に見ると「高校生9人、大学・社会人(独立リーグ含む)25人」と高校生が少ないのがわかる。それに対しパ・リーグ各球団は42人中「高校生15人、大学・社会人27人」と高校生の数が6人多くなる。この24人の高校生はどんな球歴を持っているのだろう。昨年の選手権後に行われた国際大会、18Uワールドカップ(以下、18UW杯)に出場した20人中10人がドラフトで指名され、このうちセの球団に指名されたのが2人、パの球団に指名されたのが8人と、パが多数派を形成している。