Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ジュビロ降格の陰に3つの「不在」。
パートナー、リーダー、そして伝統。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2013/11/12 10:30
不振を極め、いまだ得点が1ケタにとどまるエース・前田遼一。獲得を目論む国内外のクラブも多いなか、今冬の去就に注目が集まる。
あのジュビロ磐田がJ2に降格した。
3度のリーグ優勝を誇り、ナビスコカップを2度、天皇杯も1度制し、1999年にはアジア王者にも輝いたチームが来シーズン、J1から姿を消すことになる。
過去にも強豪クラブ、名門クラブが残留争いに敗れた例はあったが、獲得タイトルの数では磐田が群を抜いている。
山本康裕が放った渾身ヘッドはポストに弾かれ、山田大記のループシュートはサガン鳥栖のGK林彰洋の右手によって防がれた。
終盤にはDFのチョ・ビョングクを前線に投入し、コーナーキックの際にはGKの八田直樹まで上がってヘディングシュートを放ったが、鳥栖の牙城は崩せなかった。
その直後に鳴ったホイッスル――。
栄光に彩られた“サックスブルー”はなぜ、哀しみに暮れることになったのか。
攻撃のための新システムが、守備の崩壊を招く結果に。
最初のつまずきとして挙げられるのは、新システム導入の失敗だ。4-2-3-1から3-5-2(3-3-2-2)へと主戦システムを変えて今シーズンに臨んだが、これが機能しなかった。
森下仁志前監督は中盤の人数を増やし、なおかつ前線の中央に人を割き、攻撃力を高めることを目指したようだが、前掛かりになったうえ、中盤の底がひとりだったため、守備のバランスを保てなかった。それは開幕から7戦未勝利の間、すべての試合で失点したことからも窺えた。
そこに追い打ちを掛けたのが、エース前田遼一のスランプだった。
1トップから2トップに変更され、前田のパートナーには金園英学が指名された。
金園が典型的なストライカーなのに対し、前田は'09年から2年連続得点王に輝いているように自らゴールを奪うことができ、ザックジャパンで本田圭佑や岡崎慎司を生かしているように周りに点を取らせることもできる万能型のFWだ。
理想は、ふたりの得点力を掛け合わせ、ゴール数を増やすことだったのだろう。だが、ことは思惑どおりに運ばなかった。