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柏の浦和対策が実ったナビスコ決勝。
J屈指の名将対決は、敬意とともに。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2013/11/06 10:30
多くの主力を欠きながら、遂に浦和に勝利した柏・ネルシーニョ監督。カップ戦巧者ぶりを見せ、3年連続のタイトルを獲得した。
11月2日、ナビスコカップ決勝終了後、監督会見でのことだった。柏レイソルのネルシーニョ監督の質疑応答は20分を超える長いものになった。
報道陣の質問が一段落し、関係者が「そのほかのご質問はありますか? それでは会見を……」と会見を終えようとする中で、ネルシーニョ監督がさえぎるように口を開いた。
「ファイナルで勝ったチームがどうしても目立ってしまうんですけども、今日の相手となったペトロビッチ監督率いる浦和は、私のサッカー人生の中で一番難しいチームだと思っています。戦術や個人の質、それらを束ねて整理されたサッカーができている。彼の監督としての才能は素晴らしいと思いますし、彼らとともに日本サッカー界で仕事をできていることに誇りを持っています」
この日、ナビスコカップを制したことにより、ネルシーニョ監督は'11年のJ1リーグ戦、'12年の天皇杯に続いて3年連続で「国内3冠」のいずれかを制したことになる。
ネルシーニョがマイクを置くと、自然に拍手が起きた。
「それぞれがチームのために戦術やゲームプラン、規律を重んじる気持ちを強く持っています。選手との信頼関係があれば、選手たちはミッションを実行してくれます」
以前、ネルシーニョはこう言って自らのチームマネージメントへの自信を覗かせていた。そして言葉通り、柏を“勝てるチーム”に仕立てあげてきた。
その名将が、相手であるペトロビッチ監督(以下、ミシャ)を称賛したのだ。
あと一歩でタイトルを逃した相手指揮官に送った称賛に、会見場は軽い驚きに包まれ、ネルシーニョ監督がマイクを置くとともに自然と拍手が起きた。
策士として知られるネルシーニョ監督の本心は定かではないとはいえ、ボール保持においてフォーメーションが可変する“ミシャ・スタイル”に頭を悩ませていたのは確かだろう。
それはミシャが'12年に浦和の監督に就任して以降の、柏との対戦成績からでも推測できる。