Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ジュビロ降格の陰に3つの「不在」。
パートナー、リーダー、そして伝統。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2013/11/12 10:30
不振を極め、いまだ得点が1ケタにとどまるエース・前田遼一。獲得を目論む国内外のクラブも多いなか、今冬の去就に注目が集まる。
ドゥンガや名波浩は今の磐田にはいなかった。
19失点――。
これは75~90分(アディショナルタイムも含む)に磐田が喫した失点数だ。18チーム中最も多く、いかに終了間際の攻防に脆かったかが窺える。
こうした嫌な流れを断ち切るには、怒鳴ってでも仲間の顔を上げさせ、守り方を統一できるような選手が必要だった。かつてのドゥンガや名波浩のような存在だろう。
しかし、今の磐田にはいなかった。
振り返ってみれば、ガンバ大阪やFC東京が降格したときも、同じ問題を抱えていた。
遠藤保仁(G大阪)、明神智和(G大阪)、今野泰幸(東京、G大阪)、徳永悠平(東京)といった代表クラスがいたが、彼らは黙々と自分の役割をこなし、プレーや背中でチームを引っ張る職人肌の選手たち。前田や駒野友一も同じタイプと言っていい。
真のリーダーがいなければ、代表クラスが揃っても脆い。
上手く回っていれば問題ないが、歯車が狂い出したとき、誰が歯止めを掛けるのか――。真のリーダーがいなければ、代表クラスが揃っていても脆いという点に、東京、G大阪、磐田の降格の共通点が見出せる。
磐田と関塚監督にとって不運だったのは、残留争いが佳境を迎えるなかで松浦、山崎、山田大記といった攻撃のキーマンたちが次々と戦線離脱してしまったことだ。
その一方で、残留を争う15位のヴァンフォーレ甲府がなかなか負けなかったことも、磐田にとって心理的なプレッシャーになったに違いない。
甲府は今シーズン、8連敗という、磐田が経験した以上の苦境を味わっている。
だが、シーズン途中にジウシーニョとパトリックを獲得し、システムと戦術を見直すと、見事に息を吹き返す。
連敗から抜け出した甲府はそれ以降、5勝5分3敗の成績で勝点20を積み上げた。一方、磐田はその間、1勝4分8敗で勝点7しか奪えなかった。
今シーズンの結末を決定づけたのは、25節と26節ではないだろうか。