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55本で21得点の男、新潟・川又堅碁。
その「野生」が代表には必要だ!
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2013/11/15 10:30
後方からのロングフィードを、一人でゴールに結びつける様はまさにワンマン・アーミー。新潟の攻撃を一手に担う川又堅碁がブラジルのピッチに立つことはあるのか。
あの予備校講師でなくても、「いまでしょ!」と叫びたくなる。
日本代表のザックことアルベルト・ザッケローニ監督は、なぜ川又堅碁を欧州遠征に招集しなかったのだろう。
過去10シーズンまでさかのぼっても、J1リーグで20点以上をあげた日本人選手は3人しかいない。2004年の大黒将志、'09年の前田遼一、'12年の佐藤寿人だ。ここまで24ゴールの大久保嘉人にスポットライトが集まっているが、21ゴールの川又の爆発ぶりも特筆すべきものがある。
彼が所属するアルビレックス新潟の総得点は、31節終了時で43得点である。21ゴールの川又は、チームの48.8パーセントをひとりで叩き出しているのだ。チーム総得点に占める個人の得点の比率は、大久保、大迫勇也、柿谷曜一朗、工藤壮人、渡邉千真、佐藤寿人、豊田陽平らの得点ランキング上位陣のなかでもトップである。
その一方で、総シュート数は得点ランキング上位の誰よりも少ない(55本、大久保嘉人は91本)。新潟の総シュート数(331本)も、J1リーグ18チームのなかで12番目である。ちなみに、リーグ最多のシュート数を記録しているのは、大久保が所属する川崎フロンターレ(417本)だ。
好調な選手の「勢い」がチームに意図せぬゴールを呼ぶ。
川又があげている21ゴールという数字が、にわかに重みを増していく。決して多くはないチャンスを、かなりの確率で生かしている姿が浮かんでくるはずだ。
ザックにしてみれば、オランダ、ベルギーとの激突を実験室にしたくないのだろう。1トップは柿谷曜一朗が軸になりつつあり、9月以来の復帰となった大迫も鹿島アントラーズで好調だ。本田圭佑を1トップに置くオプションもある。
それでも川又の招集を待望するのは、ふたつの理由がある。
ひとつ目は「勢い」。
好調な選手は、プレーが積極的になる。迷いがない。ストライカーであれば、シュートのタイミングを逃さない。少しぐらい体勢が崩れても、ゴールを狙う意思がプレーに宿る。シュートがもたらす不確実な要素──DFにブロックされたボールが味方選手の足元へこぼれたり、GKの逆をついてゴール内へ転がっていったりする──が、ゴール前に生まれていく。