フットボール“新語録”BACK NUMBER
W杯まで8カ月の選手ミーティング。
日本代表の“攻撃の形”はどうなる?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byItaru Chiba
posted2013/10/31 10:30
0-1で敗れたベラルーシ戦後、うなだれながらサポーターたちに挨拶をする日本代表。GKの川島永嗣は「応援してくれた人たちに申し訳ない気持ちでいっぱい」と語った。
2つの“攻撃の形”は実は両立可能?
内田が前述のインタビューで「戦術も前の選手が攻撃の形を考えることも大事だとは分かっている。でも、今はひっくり返っちゃっている」と語ったように、メインテーマは“攻撃の形”であると推測できる。
ベラルーシ戦後の遠藤保仁の「いろいろなことにトライしながら、あえて狭いところで回したり、(本田)圭佑が下がってきたり、いろいろやった」というコメントにもヒントがある。
意図を持って細かいパスで中央を崩したいと考える選手――。カウンターのリスクを避けるために自分たちの陣形をあまり崩さず、クロスやロングボールでシンプルに攻めたいと考える選手――。大きく分けて、2つの考えを読み取れる。
今後、選手間の意見をすりあわせて行くのは簡単ではないかもしれないが、個人的な見立てを書かせてもらうと、その両立は可能なのではないかと考えている。
ドルトムントが、まさにそれを実行しているからだ。
ドルトムントお得意の中央突破は、日本に合っている。
10月26日のシャルケとのルール・ダービーを例にしよう。ドルトムントが3対1で完勝した試合だ。
1点目は、中央からの崩しだった。
センターバックのスボティッチが前へボールを持ち出し、右サイドのグロスクロイツへパスを送った。ここから5回連続で“1タッチプレー”が成功する。グロスクロイツがダイレクトではたき、ロイスが真ん中のムヒタリアンを使ってワンツーで前へ抜け出す。最後は中央に走り込んだオバメヤンが押し込んだ。すべてショートパスによる、トラップなしのダイレクトプレーだった。
ドルトムントの攻撃時の布陣の特徴は、ロイスらサイドMFが中央に絞った位置にポジションを取り、1トップのレバンドフスキとトップ下のムヒタリアンと近い距離でプレーすることだ。ライン際の攻撃は、オーバーラップしたサイドバックに任せるのである。一見すると、中央が密集してしまうが、味方が近距離にいるため1タッチのパス交換ですり抜けられる。
この中央突破は、日本にとっても大いに参考になるだろう。日本の攻撃陣の技術を考えれば、選手の距離感さえ調整すれば、同じような崩しができるはずだからだ。何と言っても、香川真司はドルトムント時代にその達人だった。