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<米ツアー挑戦の苦悩と光明> 有村智恵 「ゴルフが怖くなった時期もあった」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byShizuka Minami
posted2013/10/30 06:01
長距離移動、4日間大会……様々な違いを乗り越えて。
現在は練習場所のそばで一人暮らしをしている。自宅にいる時はなるべく三食自炊を心がけており、練習帰りにスーパーに立ち寄って食材を買い込むのが日課になっている。どこのスーパーが安い、オーガニックならどこ、と話す姿はごく普通の25歳だ。運転の荒いアメリカ人ドライバーにも慣れたし、カーナビがなくても近所なら問題なく運転できる。すべてを恐る恐るやっていた日々が、今では懐かしくさえ感じられる。
海外生活への適応、長距離移動、言葉の壁など克服すべき問題がたくさんあったが、その都度、真摯に向き合ってきた。
米ツアーの多くが4日間大会で、最終日にラウンドを終え、シャワーを浴びたらすぐに空港に直行。翌日には次戦のコースを回り始める。前の試合の反省をする暇すらない。
「3週間連続でスケジュールを組んだら、21日間毎日、ゴルフ場にいることになるんです。陽が長いからいつまでもプレーできるし、36ホールも簡単に回れちゃう。日本にいるよりも体力がいるなぁと思います」
宮里藍、宮里美香と話して「日本の当たり前を捨てよう」。
米ツアーでルーキーの有村はプロアマには名前が入っていない。そのため試合前日にコースを回るためには、プロアマがスタートする前、つまり陽が昇る頃にはコースに出なければならない。
休養も必要だと分かっているけれど、「コースを知らないから練習しないと」と焦ってしまい、ついついオーバーワーク気味になってしまう。
試合が続いた時は丸一日休むのか、それとも一日の練習量を減らすだけにとどめた方がいいのか。東北高校の先輩の宮里藍や、米ツアー5年目の宮里美香に相談すると、「自分の体の声に耳を澄ませばいいんだよ」とシンプルな答えをくれた。
「藍センパイや美香ちゃんと話をして、日本の当たり前を捨てようと思ったんです。私はきちんと予定を立てて実行するタイプなので、思い通りにいかないことがあると不安になることが多かった。でも今は、ある程度のルーティンを軸に、体調を見ながらその場その場で対応しようと考えています」
キャディとの関係についても同様だった。