一時帰国中、意気消沈した有村を救った父の言葉とは？

　その後、一時帰国し、地元熊本で行なわれたバンテリンレディスオープンに出場。得意なコースで意気込んでいたが、米ツアーを含めると3試合連続の予選落ちという、安定感を誇る有村には異例の結果となった。

　不甲斐ない自分と先が見えない不安に、涙が止まらなかった。

「アメリカに戻りたくない。怖い」

　久しぶりに家族や友人に会って、里心もついていた。故郷を離れて再び海を渡ることが、とてつもなく大きなことに感じた。

　暗闇をさまよう有村に手を差し伸べてくれたのは、10歳の時にゴルフを教えてくれた父、明雄さんだった。試合の前週に、明雄さんをラウンドに誘って同じコースを回った際に、こう指摘されていた。

「アドレスから体は硬いし、打ち急いでいる。どうしてそんなに怖々プレーしているんだ」

　有村自身も気づいていた。痛めた手首をかばって、持ち味の思い切りの良さを失っていることを。

「勇気を持って振る」覚悟を決めて臨んだ一戦での光明。

　一時期、コーチも務めていた明雄さんが、娘のSOSサインを見逃すわけはなかった。

　父の言葉で、有村は迷いから覚めた。

「思い切って、勇気を持って振る」

　覚悟を決めて臨んだ米ツアー第9戦キングスミル選手権は、あいにくの悪天候。5月とは思えないほどの寒さと強風、雨に苦しみ、初日は3オーバー74と大きく出遅れた。予選落ちのラインが脳裏にちらつき、珍しく姉の美佳さんにメールを送るほど落ちこんだ。しかし2日目に1アンダーで回り、4試合ぶりに予選通過を果たすと、有村はほっとした表情で「兆しが見えた」と笑みを浮かべた。

　思い切ったスイングをする感触も取り戻した。難しいアプローチからピンに寄せた際には、小さなガッツポーズもでた。スコアには大きく結びつかなかったが、勇気を持ってプレーできたことは大きな一歩だった。

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