サッカーの尻尾BACK NUMBER
今季のリーガは「再生」の時。
二強の変化と追う者たちの戦略。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byMarcaMedia/AFLO
posted2013/08/14 08:02
プレシーズンマッチで早速ゴールを記録し、ロナウドの新ポジションでのスタートは上々。メッシから得点王の座を奪還し、リーガの盟主に再び返り咲けるか。
仕掛けのポイントを2つに増やすネイマールの存在。
もうひとつのポイントが「ネイマール」だ。
ネイマールはコンディションが整わない試合もあったが、プレシーズンではさっそく個の輝きを見せた。これまでのバルサには、1対1で勝負を仕掛け、局面を打開できる選手はメッシしかいなかった。それが相手に引かれた試合、激しいマークをつけられた際のバルサの限界でもあった。
しかしネイマールが左サイドに入ることで、仕掛けのできるポイントがピッチ上に2カ所に増えた。イニエスタとジョルディ・アルバとの関係が熟成されていけば、左サイドからの崩しのパターンも一層増えるはずだ。
もちろんネイマールにも高い位置からの守備は求められるわけで、攻撃だけでなく、守備面でどれだけ貢献できるかにも注目したい。
エース・ロナウドのポジションを変更したマドリー。
レアル・マドリーの変化は、「FWロナウド」と「パスサッカーへの傾倒」にある。
新任のカルロ・アンチェロッティ監督は、プレシーズンでいくつかのことを試しているが、その最たるものはロナウドのポジショニングだった。
アンチェロッティはロナウドをよりゴールに近い位置でプレーさせたいと考えており、ポジションをこれまでよりも中央寄りに変更。2トップの一角としてベンゼマと組ませる、新たなオプションが生まれた。
これまでのロナウドは、左サイドに大きく広がり、そこから前方のスペースを生かし、中へ切れ込んで得点に絡むパターンが多かった。
アンチェロッティの狙いは、ふたつ目の「パスサッカーへの傾倒」にも関係している。
プレシーズンで最もインパクトを残したのは、新加入のイスコだった。キープ力もあり、周囲と絡みながらチャンスを作り出せる彼が加わったことで、マドリーの中盤は以前よりもポゼッションの傾向が強くなった。
特に、イスコ、エジル、モドリッチの3人が中盤に並んだときは、明らかにこれまでとは違うスタイルとなった。ボールを大事にし、ショートパスを繋げるサッカーだ。左右にロナウドとディマリアを配し、カウンターからスペースをつくという形の多かったこれまでとは一線を画す、いわばバルサ的な中盤になったのである。
チャンスメイクはある程度他の選手に任せ、ロナウドには得点に集中させたい。指揮官はそう考えている。