野ボール横丁BACK NUMBER
ロッテと中日の勝敗を分けたもの。
史上稀に見る持久戦の真実とは?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/11/08 12:45
ナゴヤドームとチェン。必勝態勢で臨んだ第6戦だった。
相手はパ・リーグのチームで、その中でも特に異質なロッテである。史上初めてシーズン3位から日本シリーズに勝ち上がってきたという勢いだけでなく、「見えたら打つ」とまで豪語するシリーズ男、今江敏晃に代表されるようにこれほど積極果敢な打線はセ・リーグにはない。初戦をみる限り、吉見もシーズン中の吉見ではない。
にもかかわらず、あんなにも早い段階でゲームを捨ててしまったことに、そんなに計算通り事が運ぶものだろうかという懸念はあった。少なくとも、あそこまでロッテに気持ちよく打たせる必要があったのだろうか。
第6戦。土俵際まで追いつめられた中日は、第1戦に先発した吉見を飛ばし、第2戦で好投したチェンを先に持ってきた。ここで順番を入れ替えている時点で、第5戦をあそこまではっきりとした負けゲームにするほど中日は万全ではなかったことが窺われる。
チェンは7回1失点と、さすがの投球を見せた。
だが、この試合は第5戦で目覚めさせてしまったサブローにやられた。初回にチェンが先制タイムリーを許し、8回には事実上の守護神、浅尾拓也も同点タイムリーを喫した。
結局、第6戦は2-2のまま延長戦に突入。規定の15回を戦っても決着がつかず、シリーズ史上最長となる5時間43分の大熱戦となった。
ナゴヤドームとチェン。この組み合わせによるドローは中日にとっては負けに等しかった。
今度はロッテが「想定外」の罠に陥ってしまった!
第7戦。今度はロッテが、中日の第5戦のときと同じようなジレンマに陥った。
第3戦で完投していた渡辺俊介がまさかの乱調。初回に3失点し、続く2回にも1失点。
ただ前日、ロッテは7人もの投手を投入している。しかも第8戦までもつれると誰になるにせよ先発が心許ない。
またしても総力戦になる可能性が高かった。
だが、ロッテベンチは2回で早々に渡辺をあきらめた。そしてシリーズ4度目の登板となる小野にスイッチ。だが、疲労の色が濃かった小野も2失点。6-2と4点差とされてしまう。しかし、その小野さえも1回で見切り、ロッテベンチは最低限の手を打っていく。
このギリギリでしのぎ続ける姿勢が、反撃の呼び水となった。
4回に1点、5回に3点を叩き出し、試合を一気に振り出しに戻す。
最終的には、ロッテはこの試合も細かい継投でしのぎ、延長12回表に8-7と勝ち越しに成功。そのまま逃げ切り、ついに日本一の栄冠を手にした。