トップアスリートの今昔健康記BACK NUMBER
小宮山悟 「日常生活の中で無意識に
健康に気を使っていた、という理想」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKeiji Ishikawa
posted2010/11/09 06:00
引退から1年、まったく身体を動かさなかった小宮山さんの体重はやはり増えていた。
「毎日、習慣として風呂場にある体重計には乗っていますが、引退したときは92kgでした。いまは95kgから96kgくらいです。たった3、4kgですが身体の内部はかなり変わってしまったと思います。嫁から『そろそろ何かしたら』とプレッシャーもかけられました(笑)」
トレーニングらしいことは何もしなかった1年間だったが、小宮山さんは他の楽しみを見つけたという。
「食事が美味しいですね。いままでは自分の身体にガソリンを入れる感覚だったので、味わう感じではなかった。それが最近だと焼肉を食べても肉が味わえる感じになったんです。こんなに美味しかったのか、と(笑)。でも、すぐにお腹いっぱいになってしまいます。身体を動かしてないからでしょうね」
まずは自分にとっての「理想の身体」を見極めることから。
ただし、小宮山さんは体重の増加を悲観的に捉えているわけではない。1年間、何もしなかった身体をどう変えていこうかと、ワクワクするような気持ちで綿密に計画中だからだ。
「現役時代の身体に戻そうというわけではないので、地味なトレーニングから始めようと思っています。たとえば家の中でのジムワーク、ダンベルを使った低刺激のトレーニングからでしょうか。眠っていた身体にまず刺激を与えてから、1カ月か2カ月経ったらジムに通いだそうと思っています。何ごともいきなりハードなことをやってもダメですから」
ある日、「何か運動しよう!」と思い立つ人は多い。しかも昔、運動をやっていたひとほど充実感を求めて激しく身体を動かしてしまう。だが、それではかえって逆効果なのだ。毎日、体重計に乗るなど習慣付けできることから始め、小宮山さんのように低刺激の運動をやっていくのが長期的には良いということ。
「野球のプロだった立場から言えば、しっかりとした仕事ができる身体を作るにはそれなりの時間が必要です。費やす時間に比例する、ということは言えると思います。ただ、会社に行って仕事をする生活をされている方は、そんなに意識しすぎる必要はないんじゃないでしょうか。健康に気を使いすぎて、『あ、しっかり時間を取らなきゃ』と思うと、かえって精神的には不健康になってしまう場合もあるかもしれません。日常生活の中で無意識に健康に気を使っていた……というのが理想でしょうね」
長い老後でもしっかり日常生活がこなせる身体作りを意識。
ユニフォームを脱ぎ、第2の人生をスタートさせた小宮山さん。今後はどんな「理想の身体作り」を目指していくのだろうか。
「かなり長いこと現役をやってきましたから、身体に相当無理を強いてきました。腰痛もありますし、体重をかける左膝、それに肩と肘は酷使してきました。正直、年齢を重ねていったときに日常生活に支障をきたさないか不安な面もあるんです。でも、年をとっていっても健康な身体でいるために、これからも最適なトレーニングを自分で発見していきたいですね」