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短期決戦の肝は“投手の踏ん張り”。
日本Sを左右する意外なデータとは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki/Tamon Matsuzono
posted2010/10/30 08:01
今シーズン、成瀬は両リーグトップとなる4度の無四球試合を記録。ロッテ投手陣はチェンを筆頭とする中日の投手力と互角に渡り合えるか
野球の世界では「四球を出すならヒットを打たれた方がいい」とよく言われる。
四球は球数も多くなるし、守っている野手のリズムも崩す。その結果、自軍の攻撃にも悪影響を及ぼすから、というわけだ。
ただこの“格言”に、確率論的な裏づけがあるわけではない。数年前に日刊スポーツが1年間のデータで先頭打者に四球を出したケースと安打で出塁させたケースの失点率を計算して、数字的にはほぼ変わらない結果だったと掲載していた記憶がある。
ただ、野村克也元楽天監督や星野仙一楽天監督らが口をそろえて「それでも投手が先頭打者に四球を与えたときには、失点が多いような気がする」と語っていたのが印象的だった。
勝負の流れを決定づけた四球をめぐる攻防。
これが短期決戦となると、その印象はますます強くなる。
今年のセ、パ両リーグのクライマックスシリーズ(以下CS)のファイナルステージでは二つのシーンが印象に残っている。
一つはセ・リーグのCSで、アドバンテージを入れて中日が3勝1敗と王手をかけた第4戦の終盤の攻防だ。
2点を追う巨人が8回、中日の高橋から2安打と小笠原の犠飛でまず1点。その裏に今度は巨人の山口が2つの四球と安打で作った満塁のピンチに押し出しで1点を許して再び2点差にされたが、9回には高橋由伸、矢野の短長打、さらに松本の内野ゴロの間に追いついた。しかし、最後は巨人の久保が1死から四球2つで一、二塁とされ和田のサヨナラ打を浴びての劇的な幕切れとなった。
「あれだけ四球を出したらね……。抑えきるというのはなかなか難しくなる」
巨人・原辰徳監督がうめいたのは、リリーフ陣の四球連発だった。
この試合では7回にクルーンが1つ、前述したように8、9回にも山口、久保の両投手が5つの四球を連発した。一方の中日のリリーフ陣は3失点はしたが与四球は0。原監督の嘆きは、この数字に起因している。