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<競泳育成の新スタイル> 平井伯昌コーチと東洋大水泳部、常識への挑戦
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byTakao Fujita
posted2013/07/19 06:01
左から田垣貞俊コーチ、山口観弘、金指美紅、宮本靖子、萩野公介、内田美希、平井伯昌監督。
「水泳界に“大学院”のような場があってもいい」
「僕は社会人になってから大学院へ行ったんですけど、大学院には、他大学を卒業した優秀な人材や社会人を受け入れるという器がある。水泳界でも同じ形で“大学院”のような場があっても素晴らしいのではないかなと思っていたんです。春佳がJOCの斡旋制度でキッコーマンに入社したように今は社会人になっても競技を続けられる環境が整いつつあるから、『他の大学出身でも受け入れられますよ』というような大学があってもいいのじゃないかと。それに今の1年生が4年生になった時にリオ五輪があるけど、その4年後の'20年の五輪で彼らは26歳で最高のタイミングになる。だからその時のための環境作りも、今のうちからやっておきたいなというのもあったんです」
さらに、平井の頭の中にあったのは、北島が北京後に本拠地とした南カリフォルニア大で、デーブ・サロコーチの下に世界中から選手が集まっていたチームだった。意識が高い社会人のトップ選手と練習をすれば、学生が得るものは大きい。
それだけではなく、かつてのアレクサンダー・ダーレオーエンやキャメロン・ファンデルバーグが来た時のように、外国選手が参加したいと言ってくれば気軽に受け入れられるような場を作りたかった。それに加えて、大学の施設を使ってのジュニアの育成という構想まで視野に入れている。
「北島や松田、寺川、上田と練習できるのはどれだけ幸せなことか」
「ゴールデンエイジがちょうど高校を卒業する年だったというラッキーな面はありますね。これが来年だったらこの形にはならなかっただろうし。今の1年生にとって、北島や松田、寺川、上田と一緒に練習できるのはどれだけ幸せなことか。寺川などはまだ記録を伸ばしているし、コーチが指導する部分だけではなく見て学ぶという部分もあるというのは、彼らにとってものすごく大きいと思います」
山口や萩野は、早めに年末の合宿からチーム平井に合流した。その中で競り合う日々や、オーストラリアの2試合では多種目に出場するタフな経験もした。平井も顔を合わせると「松田と萩野が競り合ってものすごい練習をしている。面白いですよ」と笑みを漏らすほどだった。