コンフェデ杯通信BACK NUMBER
「これは本当の日本の姿じゃない」
なぜブラジル戦で完敗を喫したのか?
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/16 12:15
「まぁ今日の試合は完敗なんで。自分たちの実力をちゃんと認めて、あとの2試合を頑張るしかないですよね」と、試合後の悔しさを内に秘めつつも、淡々と語っていた本田。
「これは本当の日本の姿じゃない」
遠藤は思うように攻撃が機能しなかった理由をこう見ている。
「ボールをとる位置も低かったし、早く前に当てられればよかったですけど、前も若干孤立していたところはあった。全体的にもうちょっと回すところは回しながらやっていけばよかった」
本来なら複数の選手が絡み、追い越しながら崩していくのが日本が目指すべき形だが、それを可能にする個々の動きも少なかった。スペースへ走り込んでいく動きもほとんどない。試合後、「これは本当の日本の姿じゃない」とザッケローニは首を傾げ、信じられないというような表情をみせていたが、それはまさに本音だろう。
両サイドバックの攻撃参加が極端に減っていた理由。
「回すところを回せなかった(遠藤)」ことは、サイドバックの攻撃参加にも影響した。
この日、内田と長友の両サイドバックは十分に攻撃参加できなかった。両国の力関係から考えても、サイドバックが基本的に守備を求められるのは当然のことではある。
ネイマールは中央から左サイドと幅広く動き、内田とのマッチアップでは常に優位に立っていた。内田は完全に抜かれることこそなかったものの、仕掛けられる回数は多く結果的に攻撃参加は限定された。
左サイドの長友にしても、対面のフッキやアウベスの攻撃参加の対応が多く、攻撃参加する回数は普段より少なかった。しかし遠藤が「サイドバックが上がってきながら、厚みのある攻撃を増やしていかないと」と語るように、サイドに縦への突破のできる選手を抱えない日本にとって、サイドバックの攻撃参加と追い越しは必要不可欠な要素でもある。それができなかったことは攻撃の幅を限定することになった。
後半追い上げるべきなのに、「トライしなかった」日本代表。
48分にパウリーニョの2点目が決まり、後半も半ばを過ぎた辺りからは完全にチームは機能不全に陥っていた。
ネイマールは気持ちよさそうにプレーし、観客は沸く。
もはや日本には1点を狙いにいく、というような姿勢さえも消えかけていた。香川はチームのそんなふがいなさを悔やんでいる。
「アウェーでこういう試合ができる経験がない中で、トライしなかったというか。あれだけ勝ちに行くって言っておきながら、その姿勢を示す作業を見せずに終わったという感じで、悔しいというか、勿体ないというか。そういう気持ちです」