日本代表、コンフェデ道中記BACK NUMBER
ホームとアウェイではまるで別人!?
本気のセレソンと90分間戦う意味。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/15 08:03
昨秋ポーランドの地で、6年ぶりにブラジルと対戦して0対4と完敗している日本代表。その前は2006年のドイツW杯1次リーグで対戦し、1対4で敗れている。通算成績は2分7敗である。
遠い。ドラえもんがいてくれたらと、本気で思う。
疲れる。生身の身体であることが疎ましい。
6月12日の8時過ぎにドーハを発った僕は、同じ日の16時前にサンパウロへ着いた。時差の関係で6時間戻るので、フライト時間は14時間強である。
サンパウロの空港で、国内線に乗り継ぐ。時間を潰す手立てがほとんどないターミナルで、4時間半も待つのは拷問に等しい。
20時20分発の機内にようやく乗り込むと、もはや何度目か数えるのも面倒な睡魔が襲ってきた。抗う気力もなく瞼を閉じる。
離陸前から途絶えていた記憶は、地面に打ちつけられるような衝撃で目覚めた。ブラジリアの空港に、機体は着陸していた。
数人で借りたアパートへ辿り着くと、すでに日付が変わっている。荷物をしかるべきところに整理し、メールチェックをして深夜1時半に眠りに落ちた。
目が覚めたのは朝の5時だった。身体は疲れているのに、睡魔は去ってしまった。地球の裏側の日本は、夕方の5時だ。こんな時間に寝ているはずがない。長時間のフライトは、過酷なまでに体内時計を破壊する。
しかたなくテレビを点けると、日本代表の到着の様子と練習風景が映し出された。ブラジルのテレビ局も、本田圭佑と香川真司に注目している。
日本だけではない。参加各国の情報が、どんどんとアップデートされていく。開幕を3日後に控えて、ブラジルはコンフェデレーションズカップのムードに包まれている。
南米各国代表のホームでの戦いぶりは、まったく別物だった。
ブラジル入り後2日目の日本の練習は、いつもより少しだけ長めの公開となった。とはいえ、見ることができたのは30分にも満たない。ピッチの3分の1ほどのスペースで行なわれる10対10のメンバーを書き写し、別メニューの選手がいないことを確認したところで、チームだけの時間となった。
報道陣のなかには、ブラジルのメディアも目立つ。サッカー王国を自負するとしても、開幕戦の対戦相手を無視するわけにはいかないのだろう。
日本が南米大陸で公式戦に臨むのは、1999年のコパ・アメリカ以来2度目となる。フィリップ・トゥルシエ率いるチームが、パラグアイで行なわれた大会に招待参加したのだ。
グループリーグの対戦相手はペルー、パラグアイ、それにボリビアだった。ペルーとパラグアイはキリンカップなどで来日しており、互角の戦いを繰り広げてきた。ボリビアにしても、実力は2カ国と同程度である。
いずれも簡単な相手ではないが、ブラジルやアルゼンチンはいない。苦戦を覚悟しつつも、淡い期待を抱いていた。
南米で対峙した3カ国は、日本のホームゲームとはまったく別の姿を見せた。コンディションがいいことを差し引いても、強烈なまでに実力差を突きつけてきた。
衝撃的だったのはパラグアイである。
首都アスンシオンのスタジアムは、キャパシティいっぱいの4万人の観衆で埋め尽くされた。パラグアイがボールを持つたびに、地鳴りのような歓声が沸き上がる。日本がボールを失うたびに、狂熱がうごめく。対戦相手を威圧する雰囲気は、6万人以上を収容する国立競技場をはるかに凌駕していた。1991年から日本の国際試合を取材してきた僕は、〈アウェイゲーム〉という言葉の意味を初めて知った気がした。