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パ・リーグが圧倒し続ける交流戦。
セの各球団が直視すべき課題とは?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/06/12 10:31
楽天・田中将大は交流戦で5試合を投げて4勝(1試合は勝ち負けつかず)と大車輪の活躍。6月9日の巨人戦では自己新となる開幕8連勝を達成した。
主力投手の流出が、若手にチャンスを与え、成長を促す。
「指名打者制度がないセは敵地での戦いが不利」という意見は、セのホームグラウンドでの成績が参考になるが、今シーズンは6月9日現在、35勝34敗2分でパが敵地でも勝ち越している。ホームでは32勝14敗2分とより大きく勝ち越しているので指名打者云々はもっともらしく聞こえるが、やはりセが本拠地で勝ち越さないと信憑性をもって伝わってこない。
私はパの新陳代謝の速さがセを上回っていることが、パが勝ち越す大きな要因になっていると思っている。現在、交流戦1、2位のソフトバンク、楽天は'12年にエース格の投手が流出している。ソフトバンクがホールトン、杉内、和田の3人、楽天が岩隈である。
ソフトバンクは'11年から'12年にかけて日本一から3位に順位を下げ、楽天は5位から4位と順位を1つ上げているがBクラスを低迷している。しかし、両球団とも'13年にはしっかり盛り返している。主力投手がいなくなればそれに代わる若手がきちんと育ち、首脳陣は彼らを迷わず抜擢するというシステムが出来上がっているのだ。そういう中から、ソフトバンクは岩嵜翔、千賀滉大、武田翔太が飛び出し、楽天は釜田佳直、菊池保則、美馬学、則本昂大がチームに欠かせない存在になっている。
セは巨人、阪神に代表されるようにパ・リーグの選手を受け入れる側なので、新陳代謝のスピードはどうしても落ちる。それでも新旧交代を意識的に行って巨人が昨年日本一を奪取しているのでやれないことはない。
最下位に沈む日本ハムだが、若手の力で復活は間近!?
昨年のパ・リーグの覇者、日本ハムは現在最下位に沈んでいるが、その選手起用は実に冒険心に富んでいる。もっともパ・リーグらしいチームと言ってもいい。その象徴的存在が高校卒1年目のゴールデンルーキー・大谷翔平だ。最近2試合、5番ライトで起用され、8打数4安打1打点と期待に応えている。19歳の新人がプロのスピードやキレの鋭い変化球に惑わされず、6月9日の段階で63打数21安打、打率.333と上々の成績を上げているところが末恐ろしい。
大谷以外でも、故障発生で登録を抹消されたが西川遥輝(3年目・21歳)が45安打を放って打率.304と結果を残し、田中賢介が抜けた穴を立派に埋めている。ファームでは将来の主力と期待される石川慎吾、近藤健介、谷口雄也がレギュラーとして活躍している。今年下位に落ちても来年以降、再び上位に返り咲く態勢を整えているように見えるところがセ・リーグの下位球団と異なる点である。