野球善哉BACK NUMBER
金子侑司、浅村栄斗が好調の西武。
有望株を輩出し続ける“伝統”の秘密。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/04/24 12:55
スイッチヒッターとして、走攻守揃った選手として、評価されつつある金子。俳優の向井理と似ており、イケメンルーキーとしての人気も高い。
意図しなくとも若手が成長するのは、伝統の力なのか!?
今季、オリックスから移籍してきた山崎浩司は、西武の中にある空気をこう語る。
「縛られた感じがしないというのは、ここへきて思いますね。自由っていうと言葉が違うんかもしれないですけど。オリックスの時はいつも『これ失敗したらどうしよう?』とか悪い方をイメージしながら試合に出ていたように思います。僕ら上の選手が後ろにちゃんといてるから、と感じて若い奴らが自由に活躍してくれてるんだったら嬉しいですけど(笑)」
若手がノビノビとプレーできる環境をベテランが作る。
そうした分かりやすい構図をチーム内に求めてしまいがちだが、西武の場合は意図されたものではないらしい。
とはいえ、チーム内にそういうムードが常にあるのも間違いないと、栗山キャプテンは断言する。
「(若手が試合に自然と入っていく)伝統のようなものは確かにあると思います。ここ近年で言うと、渡辺(久信)監督が若手を積極的に使ってくれて、その上で、1試合ダメだったとしても使い続けてくれている。『そういう時もあるやろ』くらい懐の深い起用をしてくれているので、選手も思い切ったプレーができるのだと思う。
若手のためにプレーしやすい環境を作らなアカンかなと意識的に考えたこともあるんですけど、今のチームは浅村と金子は同い年で、秋山(翔吾)や銀仁朗も年が近いんでね。年齢が近い者同士がチームにいると、刺激にもなるし、負けてられへんし、遅れはとれないなという気持ちに自然となるんですよね。僕らが何もしなくても、自然にアイツらはアイツらで持ち味を出してくれている。監督の起用には意気に感じているやろうし、俺も俺もってみんな積極的に前へ出てくるしね(笑)」
キャプテンの栗山は「何にもしなくても彼らが自然と持ち味を出している」と言った。
一方で、若手の炭谷は「栗山さんがやりやすいようにしてくれている」と話している。
絶妙なこの「あ・うん」の関係こそが、目には見えない西武の中に流れている空気の正体なのだろう。
神社仏閣に行くと身が引き締まり、森林に行くと心が落ち着き、あるいは、“伝統校には不思議な力が働く”という高校野球の格言もある。目に見えない不思議な力が働く場所には、それなりの理由があるのである。
彼ら若手選手の活躍を後押しするのは、間違いなく西武伝統の力なのである。