野球善哉BACK NUMBER
金子侑司、浅村栄斗が好調の西武。
有望株を輩出し続ける“伝統”の秘密。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/04/24 12:55
スイッチヒッターとして、走攻守揃った選手として、評価されつつある金子。俳優の向井理と似ており、イケメンルーキーとしての人気も高い。
才能を眠らせていた金子を目覚めさせた西武の育成環境。
彼らについてはシーズン前のコラムで取り上げたが、高卒・大卒の違いはあるが実は同い年なのである。ともに遊撃手として中島の後釜を争う中でしのぎを削り、開幕後は浅村が主に一塁へとポジションを移し、好調な打撃では2人してチームを引っ張る存在となった。
まだ実績のあった浅村の活躍には予感めいたものはあったにせよ、金子の活躍には驚くべきものがあった。
なぜなら、金子は立命大を経てドラフト3位で入団したが、アマチュア時代からさほど評価が高い選手ではなかったからだ。
大学3年で日本代表入りしたものの、その後は低迷。大学4年時は打率が3割を大きく割り込んだ。リーグの選抜チームで構成するメンバーにすら金子は選ばれなくなっていた。シーズン開幕前の新人王候補に、彼の名前を挙げていた人はおそらくいなかっただろう。筆者自身も金子のドラフト指名順位には驚いたし、今の活躍も予測できなかった。
だが、ポテンシャルがありながらその才能を眠らせているような選手がプロ入団後に開花することこそが、西武の強さを表しているのではないだろうか。
自分のプレースタイルを徹底的に貫くことで、攻守に活躍する金子。
昨日の試合ではこんなプレーがあった。
3回表、1死一塁から2番・角中勝也のショートゴロを金子が失策。ピンチを拡大してしまう。ところが、2死一、三塁となって4番・福浦和也が二遊間へ(それも二塁寄りの打球だった!)のボテボテのゴロを放つと、金子は名手・片岡治大に任せようとはせず、ボールを掻っ攫うかのようにさばいてアウトにしたのだ。
ミスの後でも物怖じしていないのである。
5回表の1死一、三塁のピンチでは片岡と併殺を成立させた。
金子は言う。
「ミスはありましたけど、それはそれとして切り替えられました。ミスしても次からのプレーをしっかりしようという気持ちでこれまでもずっとやってきたので。自分のプレーはできたと思います」
打の方でも金子の好調は続いている。
「打席の中では思い切りいく、ということをオープン戦から心がけていて、それがシーズンに入ってからも続けられています。確かに、大学4年時は結果が出ていませんでしたけど、打席の中で当てにいくのではなく振り切るということだけは意識してやっていましたので。結果が出ない中でも、やろうとすることを貫いて……それが今もできているんですよ。逆に、大学3年の時は出塁することばかり頭にあって、自分のスイングができていなかったですからね。しっかり振り切ることを忘れんとこうと思って、今もやっています」