野球善哉BACK NUMBER
金子侑司、浅村栄斗が好調の西武。
有望株を輩出し続ける“伝統”の秘密。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/04/24 12:55
スイッチヒッターとして、走攻守揃った選手として、評価されつつある金子。俳優の向井理と似ており、イケメンルーキーとしての人気も高い。
パ・リーグの首位を走る西武の勢いが止まらない。
4月23日のロッテ戦で、先発の牧田和久が三振ゼロながら今季初完封。13日の楽天戦の菊池雄星、21日の日本ハム戦の十亀剣に続く、今季3度目となる先発完封劇は今の西武の勢いを象徴している。
打撃陣も負けてはいない。
打率部門でリーグ3位のヘルマンをはじめ、栗山巧、金子侑司、浅村栄斗と10傑のうち4人を西武勢が占めている(4月23日現在)。この4人は打点も多く、チーム総得点97のうち54点をたたき出している。チーム打率こそオリックスに次いで2位だが、得点、盗塁数はリーグ1位。セ・リーグの首位、巨人と比較しても本塁打数以外はひけを取っていないのである。
昨季までのチームの顔だった中島裕之がアメリカへ渡り、主砲・中村剛也がひざの故障から前半戦の復帰が絶望とされていた今季の西武が、シーズン開幕後、これほど投打のかみ合う試合運びを見せるとは誰が予測しただろうか。
シーズン前からの異常な危機感が、西武躍進の秘密。
キャプテン・栗山巧が現在のチームの好調をこう分析する。
「中島さんと中村がいないというのは、単純に考えても40本塁打が抜けるわけですからね、それは大きいですよ。ただ、それでもしっかり戦えているのは……例えば、シーズンに入って打撃の調子が上がってこないと焦りますよね? 焦って危機感が芽生える。でも今年は中島さんと中村が最初からいないんで、シーズンに入る前からチーム全体にすごい危機感があったんですよ。今日は好調で打てているからといって、明日も打てると呑気に思ってる奴はひとりもいないんです。だから、打てなかったら四球を選んでいこうとするし、大きいのではなくても、なんとかつないでいくという意識がチーム全体に生まれている。それが今は上手くいっているんじゃないですかね」
このチームの驚くべきことは、チームの顔とも呼べる重要な選手の移籍や主力の長期離脱などがあっても、いつも若手がしっかり台頭してくるところだ。
過去を振り返ってみても、有力選手が抜けるといつの間にか若手が顔を出してきている。それは打撃陣に限ったことではない。今季のローテーション投手もすべて20代で固めていることからも、投打にわたった現象であることなのが分かる。
今季も開幕直後、2人の若手がチームに勢いをつけてきたのは紛れもない事実だった。
その2人とは5年目の浅村とルーキー金子である。