野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
“本家”二天一流の達人に聞く――。
大谷翔平、二刀流成功の極意とは?
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/04/23 10:30
4月22日現在、大谷は一軍8試合に打者として出場。18打数5安打、打率.278という数字を残している。
大谷翔平の二刀流挑戦に試練が訪れた。
13日、神戸で行われたオリックス戦での二回裏。ライトファウルゾーンに上がったフライを追い掛けた際に、右足首を捻ってしまい途中交代。試合中に病院へ搬送され精密検査を受けた結果「軽い内半捻挫」との診断を受け、翌日には登録抹消。「早ければ5月にも」と噂されていた投手としての一軍デビューの予定も白紙に戻り、キャンプからここまでなんだかんだと順調に来ていた二刀流挑戦が、ここにきてはじめてといえる躓きを見た。
ケガの具合は軽傷ではある。しかし、投手にとって軸足となる右足首を守備中に負傷してしまったことは、「やっぱり二刀流はリスクが大きい」「投球のことを考えたら思い切った守備や走塁ができなくなる」など、プロ野球における二刀流不可能論に拍車を掛けたように思える。
大谷は、高校時代には投手として160キロをマークし、打者としては高校通算56本塁打を放つなど、投打共に素質は誰もが認めるものを持っている。それだけに、この二本の刀がまともな武器となればプロ野球界での「エースで4番」なんて前代未聞の革命をもたらす可能性を秘めてはいるのだろうが、
「やはり二刀流は夢物語。このままじゃひとつもモノにできないまま中途半端な選手で終わってしまうのではないか」
なんて、言葉ばかりがプロ野球関係者から聞こえてくる昨今。やはり、二刀流の道はかくも険しきものであるのかと改めて思い知らされるわけである。
剣の道にヒントを求め、二天一流の達人に話を聞く。
すべてがシステマチックになり、選手の個性がなくなったと言われるようになって久しい近頃のプロ野球界において、この大谷の「二刀流挑戦」というトピックは、そんな誹りを一発でひっくり返す、かつての豪傑たちが跋扈していたプロ野球怪獣大戦争の時代が如き事件だっただけに、心のどこかで「ある程度やったところで一本に絞るんだろう」なんて思いつつも、どうにかしてモノにして欲しいものだと願わずにはいられない。
しかし、どうすれば金田正一に江夏豊、堀内恒夫、桑田真澄もイチローも松坂大輔なんて天皇やら小天狗やら天才やら怪物と呼ばれた人間離れした選手ですら、一人として挑戦しなかった二刀流なんてものを究めることができるのだろう。
それは、もはや二刀流の剣豪、宮本武蔵でもなければ、不可能なのではないだろうか――。
というわけで、野球界において過去、誰も成し遂げられなかった二刀流の真髄を会得するには、本家である剣の道にこそヒントがあるのではないかと思い、「二天一流」の達人に聞いてみることにした。