欧州CL通信BACK NUMBER
劇的に転がり始めた歴史の歯車。
ドルトムント、レアル戦圧勝の裏側。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/04/25 13:10
レアル相手に4得点を決めたレバンドフスキ。試合後には「この試合を勝利で終えても、まだ僕たちは一歩進んだだけだから。4つもゴールを決められたのは、勿論嬉しいけどね。でも、目指しているのは決勝だから」とコメントした。
歴史の転換は、日めくりカレンダーをめくる作業とは似ても似つかない。365枚の同じ重さの紙で作られたカレンダーがめくられるように、淡々と次のステージに進むことなどないのである。
それはむしろ、ダムの決壊に似ている。それまでたまっていたものが、一気に溢れ出すのだ。
だから、衝撃は大きい。一目でわかるくらいに、深く、激しく、新たな歴史の1ページは刻みこまれる。
CL準決勝1stレグのもう1試合、バイエルンがバルセロナを4-0という衝撃的なスコアで下した翌日の4月24日、今度はドルトムントがホームでレアル・マドリーを4-1と蹴散らした。
格上と目されるスペインのチームに、ドイツのチームが挑むという試合前の予想は、見事なまでに覆された。CL史上初めてとなるドイツ勢同士の決勝戦となる確率は限りなく高い。
準々決勝のマラガ戦2ndレグからちょうど2週間。あの夜に続き、ドルトムントの多くの選手が「素晴らしい夜になった」と語った。この試合、何が起きたのだろうか。
昨季とも、今季これまでの戦い方とも違ったドルトムント。
「明日の試合で我々がどんな戦術を採用するか、それは見てのお楽しみだ」
試合前日の記者会見でドルトムントのクロップ監督はそのように語っていたが、この日はこれまでと明らかに戦い方を変えてきた。昨季までとも違うし、今季のこれまでとも違ったのだ。
今季は、昨季まで『敵陣で』しかけていた“Gegen-pressing”(ゲーゲン・プレッシング)を捨てて、一度自陣で守備ブロックを作ってから、「ボールを奪いに」いき、そこからカウンターを狙う戦い方を基本としていた(マラガ戦2ndレグのレビュー記事を参照)。
だが、この試合ではさらにリスクを排除することに徹するサッカーを見せたのだ。自陣で守備ブロックを作り、相手チームが自陣に入って来ても、勢いよくボールを奪いにいくことはほとんどない。ボールを持つ選手を相手にしても飛び込まず、腰を落として、コースを限定する。相手のミスを待ちながら、サイドに追い込めたときにようやくボールを奪いにいくくらいだ。
バスケットボールに例えれば、昨季まではオールコートのマンツーマンで、今季のこの試合の前まではハーフコートでのマンツーマン。そして、この試合はハーフコートでのゾーンディフェンスといったところか……。