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<マドリーでの不遇の時を超えて> カカ 「再び輝けると信じて」
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2013/04/26 06:00
ミランからマドリーへと移って3年。
バロンドールを手にした男は、かつての輝きを取り戻せずにいた。
今季の開幕前には指揮官に構想外を告げられるも、
手にした短い出場時間で独自の創造性を見せつけた。
童顔の苦労人が戦う、波乱に富んだ人生を追う。
バロンドールを手にした男は、かつての輝きを取り戻せずにいた。
今季の開幕前には指揮官に構想外を告げられるも、
手にした短い出場時間で独自の創造性を見せつけた。
童顔の苦労人が戦う、波乱に富んだ人生を追う。
昨秋のある日、マドリード郊外のバルデベバスの芝の上を、ひとりの選手が黙々と走っていた。イベリア半島を照りつける陽射しはまだ強く、額には汗が光っている。
白い練習着を着たカカの隣にいるのは、レアル・マドリーの下部組織の若手たちだ。幼い顔立ちの若者の間では、童顔のカカも少し浮いて見える。
この日、トップチームはオフだった。前日にチャンピオンズリーグでマンチェスター・シティを破っており、モウリーニョは選手たちにご褒美の休暇を与えていた。
しかしカカは自ら望んで練習場へと向かう。頭には少しでもコンディションを取り戻したいという思いがあった。かつてバロンドールを手にし、世界の頂点に立った彼は、開幕から1カ月以上がたっていたが、まだ1分も出場していなかったのだ。
開幕前、カカには移籍の可能性もあった。マドリーは夏にルカ・モドリッチを獲得し、カカはトップ下のポジションの3番手という立場となる。モウリーニョは構想外であるということを彼に告げ、プレシーズンでも主力から外していた。しかし高額の年俸とここ2年間の低調なパフォーマンスが足かせとなり、結果的にカカは残留する。