欧州CL通信BACK NUMBER
劇的に転がり始めた歴史の歯車。
ドルトムント、レアル戦圧勝の裏側。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/04/25 13:10
レアル相手に4得点を決めたレバンドフスキ。試合後には「この試合を勝利で終えても、まだ僕たちは一歩進んだだけだから。4つもゴールを決められたのは、勿論嬉しいけどね。でも、目指しているのは決勝だから」とコメントした。
ドルトムントの走行距離は普段より少ない118.7km。
昨季までのサッカーも、自陣でブロックを作ってからアタックする今季のサッカーも、最前線のフォワードが相手のボールホルダーにアタックに行くのがスイッチとなり、フォワードに近い選手から順にプレスをかける相手が定まる。
ところが、この試合ではあくまでも4人のディフェンダーが最終ラインを決め、その前で2枚のボランチと両サイドのMFが2つ目のラインを作り、その前のレバンドフスキとゲッツェが相手のパスコースを限定するというサッカーだった。これまでは前から守備が始まっていたが、この試合では後ろから守備が始まっていたと言い換えてもいいだろう。
ハードに当たりにいかない分だけ、運動量も普段より少なかった。この試合前までの1試合平均のチーム全体の走行距離は121.4kmだったが、この試合はそれを下回る118.7kmとなっている。
加えて、レアルはディマリアが負傷明けでベンチスタートとなったこともあり、4-1-4-1に近い4-3-3だった。これが4-2-3-1のシステムを敷くドルトムントの守備からすれば対応しやすかった、という側面もあるだろう。
クロップ監督の資質は、“コンセプトを柔軟に変えていける”こと。
試合は、序盤からホームのドルトムントが主導権を握る。7分にはロイスがドリブルでエリア内に持ち込み、ゴール左スミを狙ったシュートを放つ。GKロペスに阻まれたが、このシーンはドルトムントが試合の流れを序盤から掴みかけていたことを表していた。
そして、前半8分。相手のパスをカットしたギュンドガンが左サイドにボールを送る。シュメルツァーがスルーしたボールはゲッツェのもとへ。そこから送られたボールを、ファーサイドでレバンドフスキが合わせて、ドルトムントがあっさりと先制した。
いち早くリードを奪ったことで、ドルトムントは試合前のプランを着実に実行していく。守備ではほとんど破たんがなかった。
攻撃ではどうか――。
今季、これまではボールホルダーにアタックしていたことで、ボールを奪ってから素早くカウンターに移ることが出来た。その意味で、この日はアタックしない分、普段のような守備から攻撃へ移る際の勢いはなかったが、レアルにアウェイゴールを許すことだけは避けたい1stレグの戦い方としては申し分のないものだった。クロップの監督として優れた資質は、成功体験に固執せずに、コンセプトを柔軟に変えていけることだろう。
「我々の最初の25分間は、グレイトだったよ!」
試合後にクロップ監督も満足気にそう漏らしている。