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劇的に転がり始めた歴史の歯車。
ドルトムント、レアル戦圧勝の裏側。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2013/04/25 13:10

劇的に転がり始めた歴史の歯車。ドルトムント、レアル戦圧勝の裏側。<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

レアル相手に4得点を決めたレバンドフスキ。試合後には「この試合を勝利で終えても、まだ僕たちは一歩進んだだけだから。4つもゴールを決められたのは、勿論嬉しいけどね。でも、目指しているのは決勝だから」とコメントした。

ハーフタイム、モウリーニョは危機感を強く訴えた。

 試合後にモウリーニョは、ハーフタイムのやり取りについてこう説明している。

「選手たちには『ミスをしないように』と伝えた。かなり長い時間にわたって、我々はまずいプレーをしていたのだから。『これでは4点、5点、とられて負けてしまうぞ』と話した」

 そう、レアル側も危機感を覚えていたのだ。相手のミスに付けこめたと無邪気に喜べる内容とは程遠い前半だったのがその理由の一つだろう。

 さらに、こんな理由もある。リーグ戦では優勝の可能性が限りなく低くなっている以上、CLで良い成績を残さないといけないというプレッシャーが彼らにはあった。昨季もこの準決勝で敗れている。CLベスト4で喜べる立場ではない。

 ドルトムントのように、リーグタイトルを奪われたとはいえ、CLでは戦前の期待を大きく上回るベスト4まで進出したため、今シーズンは成功と言ってもよい立場に置かれているチームとは違うのだ。

前半には無かった、サイドバックの深いオーバーラップ。

 1-1で迎える後半は、アウェイゴールのルールを考えればレアル有利とも言える状況だったはずだが、実際は、ホームのドルトムントの方がリラックスして試合に入ることが出来た。

 そして、そんな気分を象徴するかのように後半5分、早くもゴールが生まれる。

 ピシュチェクのクロスはケディラに阻まれたが、ブラシュチコフスキがこれを頭で後方のロイスにつなぐ。ペナルティエリアにさしかかるところにいたロイスがシュートを選択。これをゴール前にいたレバンドフスキがトラップ。ターンして、2-1とする勝ち越しゴールを突き刺したのだ。

 後半開始時からレアルは、エジルをトップ下、モドリッチを右サイドにおいた4-2-3-1にシステムを変更しているが、これがすぐに機能したとは言えなかった。その隙をドルトムントは見逃さなかった。

 そして、勝ち越しゴールの勢いをそのままに攻撃を続けていた後半10分のことだった。

 ピシュチェクのクロスがレアルの選手に当たりコースが変わる。これをブラシュチコフスキが競ると、左サイドにこぼれる。ペナルティエリアにさしかかるところにいたのが、左サイドバックのシュメルツァーだ。

 後半が始まってからボールを支配して、相手を押し込んでいたとはいえ、彼がこの位置でボールを受けるのも、ペナルティエリア付近には多くのドルトムントの選手たちが殺到していたのも、リスクを冒さないように心がけていた前半にはあまり見られないシーンだった。

 シュメルツァーは思い切り左足を振り切り、シュート気味のクロスを送った。これをトラップしたのがレバンドフスキだ。ゴール右上に豪快に蹴りこみ、この日3点目のゴールが生まれた。前半43分、同点にされたときにも決してあきらめることなく、チームを鼓舞した2人が絡んだゴールだった。

 これでスコアは3-1。試合の行方は決まった。

【次ページ】 クロップ監督の言葉に探るドルトムント好調の秘密。

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