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奇跡の逆転劇で15年ぶりCL4強!
“香川後”も進化続けるドルトムント。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/04/10 13:25
後半48分に起死回生の逆転弾を決めたサンターナ(右)と、15年ぶりのベスト4進出を喜ぶドルトムントの選手たち。
後半37分、マラガのエリセウのゴールが決まり、1-2となった直後、ドルトムントのキックオフで試合が再開する少し前のことだった。
左腕に白いキャプテンマークを巻いていたドルトムントのGKバイデンフェラーがゴール前からわざわざセンターサークルまで飛び出してきた。ベンチ前にいるクロップ監督が早く持ち場に戻るように促してているが、彼の目には入っていないようだ。両手をたたき、鼓舞するバイデンフェラー、その視線の先にいるのは、気落ちしていたロイスだった。
マラガのホームで行なわれた1stレグは0-0で分けている。CL(チャンピオンズリーグ)では、2試合の勝敗が同じ(2試合とも引き分け、あるいは1勝1敗)場合、アウェイでのゴールを2倍にするルールがある。ドルトムントが勝ち上がるためには、少なくともさらに2点を加えないといけない。2点をとるために、残された時間は8分とロスタイムだけだ。絶望的な状況だった。
そんなバイデンフェラーの言葉が響いたのだろうか。
アディショナルタイムに入った91分、スボティッチの折り返しがゴール前でこぼれると、ロイスが押し込み2-2になる。奇跡をおこすために、あと1点。
そして、その3分後。レバンドフスキのクロスをシーバーが競って、ペナルティエリア内左サイドにいたロイスのもとにボールがこぼれる。ロイスがシュート性のクロスを思い切りゴール前に蹴りこむと、ボールはこぼれ、最後はサンターナが押し込んで、ついに3-2。
逆転だ。
結局、このまま試合終了のホイッスルが鳴り、ドルトムントは準決勝にコマを進めた。
ドルトムントが独自のプレッシングサッカーを封印した理由とは?
試合後のクロップ監督は、いくつもの印象的な言葉を残しているのだが、冷静にこんな感想ももらしている。
「今日の試合はこれまでのCLのなかで、最悪のゲームだった」
最悪? いったい、どういうことだろうか。
実は、今シーズンのドルトムントは、過去2シーズンとは大きく異なるサッカーに取り組んできた。過去2年にわたりドイツを制した彼らのサッカーの核となる「gegen-pressing」(ゲーゲン・プレッシング)を封印したのだ。
「gegen-pressing」とは、相手に取られたボールをすぐに奪い返すためのプレスのことだが、通常のプレスと異なる点がいくつかある。
相手陣内でかけるプレスで、相手ボールになってから10秒以内にボールを奪い返すことを目的とする。チームが陣形を整えて相手のボールホルダーを追い込むというよりは、ボールを持った選手にダイレクトにプレスをかけることが目的だ。バスケットボールでいえば、ゾーンディフェンスというよりもフルコートでのマンツーマンに近い。これが過去2シーズン、ドルトムントをドイツ王者に押し上げた戦術だった。
戦い方を変えた理由を、クロップ監督はこう説く。
「私はデータから学んだんだ。(ヨーロッパの舞台では)プレスをかけるチームは勝利の可能性を減らす。これまで我々は相手よりも多く走っていたし、できるだけ高い位置で相手にプレスをかけてしまっていたんだ……」