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1000試合出場のギグスだけじゃない!
今こそ見直されるべき“30代の価値”。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/03/13 10:30
レアルとのセカンドレグでディマリア(左)と競り合うギグス。出場1000試合の内訳は、マンU932試合、ウェールズ代表64試合、英国代表4試合。
ファーディナンド、代表復帰の可能性は?
興味が持たれるのは、一昨年のEURO2012予選以来となる、代表復帰の可能性だ。昨年からイングランドを率いるロイ・ホジソン監督は、ファーディナンドの再招集を拒み続けている。長期展望の下に、クリス・スモーリングとフィル・ジョーンズにチャンスを与えたいのだとしても、若い両名は、所属するマンUのCBとして、ファーディナンドの後ろで3、4番手の立場に留まっている。
代表での現レギュラー格は、ギャリー・ケーヒルとフィル・ジャギエルカのコンビだが、27歳の前者はまだしも、後者は今夏で31歳。実力的にも、もしエバートンではなくマンUに所属していたとすれば、ファーディナンドとのポジション争いに勝てるとは思えない。ホジソンは、「純粋なサッカー面での理由から」と説明しているが、少なくとも、連戦のないW杯予選で、ファーディナンドが呼ばれない正当な理由は見当たらない。
逆に、代表では戦力視され続けていても、クラブで見切りをつけられたと思しき34歳が、フランク・ランパードだ。イングランドでは、EURO後も4試合に先発起用されて4得点。チェルシーでも、MFでありながら、今季中にもクラブ歴代得点王に躍り出るペースでゴールを重ねている。
中盤の得点源としてのランパードの魅力は今季も不変。
にもかかわらず、今季末で切れる契約の延長交渉は始まってもいない。昨年11月からチームを預かるラファエル・ベニテスは、暫定監督という立場もあって、就任直後から「ランパードは今季がここでの最後だと思う」と諦めムードだが、2月末までの20試合で11得点というランパードがいなければ、ベニテスの暫定指揮は既に終わっていただろう。一方の代表監督は、「噂のある米国などに移籍されると調子を確認し難い」と嘆く状況だ。
たしかに、現在のランパードは、以前のような「故障知らず」ではなく、先発が続けば、疲れからか存在感の薄い試合もある。だが、中盤の得点源としての魅力は、完全にボランチが定位置となった今季も不変だ。
20点前後が当たり前の得点数は、攻撃センスを持ち合わせていないジョン・オビ・ミケル、シュートを吹かしがちなラミレスの両ボランチには期待薄。オスカルを深い位置で使う手もあるが、それでは、攻撃の鍵を握る2列目の威力が低下してしまう。
クラブには、ジョシュ・マケークランという攻撃的MFもいるが、ユース上がりの20歳は、レンタル移籍で先発を重ねるミドルズブラ(2部)での今季を含め、得点のないまま、チェルシーでのトップデビューから2年半が経過している。
ウェストハムから移籍して12年目のランパードは、生え抜き同然にファンに愛され、ゴールを決め続けている。高齢と高給を理由に放出を望むチェルシーの姿勢には、当人と従兄弟の関係にあり、現在はテレビ解説者のジェイミー・レドナップでなくても、「どうかしている」と思ってしまう。