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バルサ、ミランを下してCL8強進出。
4-0の圧勝劇を生んだスパイスとは?
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2013/03/13 13:10
メッシによるこの試合最初のゴール直後に、駆け寄ったチームメイトたち。ミランとの2ndレグは、強いバルセロナが復活した記念すべき試合となった。
試合後、ジェラール・ピケは嬉しそうに話していた。
「カンプノウの歴史の中でも最高の試合のひとつだったと思う。まさに完璧な試合だった」
シャビ・エルナンデスは声援を送り続けた観客を前に少し興奮気味だった。
「こんなカンプノウを見たのは久しぶりのことだった」
0-2で完敗を喫したサンシーロでの1stレグの後、選手たちの顔には悲壮感が漂っていた。誰もがひと言ふた言、ぼそぼそと話しては、暗い顔で引き上げていったものだ。
それから3週間後、試合後のカンプノウにはまったく異なる表情の選手たちがいた。
メッシ、ビジャ、アルバがゴールを決めた、4-0の圧勝劇。
ピッチの上でみせたプレーも、1stレグとはまったく異なるものだった。
NYのビラノバと電話で相談して2ndレグの戦術を変更したロウラ。
サンシーロでは自陣に引くミランを相手にボールはキープするものの、90分間で決定機を一度も作り出すことができなかった。人数をかけて守るミランを前にスペースはなく、メッシはボールを欲しがっては中盤まで下がり、エリアから遠ざけられた。危険なゾーンには、バルサの選手は誰ひとりいなかった。
サンシーロでの敗戦をふまえ、ジョルディ・ロウラ監督代行はニューヨークで療養中のティト・ビラノバと電話で話し合い、この日のゲームプランを組んだという。この試合の1週間前のことだ。
ポイントは2点だった。それがダビド・ビジャの起用と、ダニエウ・アウベスのポジショニングだ。
ロウラはビジャの起用の意図を次のように明かしている。
「やるべきことは明確だった。ミランのセンターバックを上げさせないこと。今日はそれが必要だった。そのためにビジャをより中央で起用したんだ。我々はその練習に取り組んできた」
普段は左右どちらかのウイングとして起用されることが多いビジャだが、この日はほぼCFとしてプレーした。
1stレグ、裏に抜ける動きはせず、ボールを受けに下がる動きが多いメッシに対して、ミランの両CBフィリップ・メクセスとクリスティアン・サパタは裏を捨てて彼に寄せることで、中盤のエリアを密集させることに成功した。しかしこの日は裏を狙うビジャがCBの近くにいることで、それができなかった。