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1000試合出場のギグスだけじゃない!
今こそ見直されるべき“30代の価値”。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/03/13 10:30
レアルとのセカンドレグでディマリア(左)と競り合うギグス。出場1000試合の内訳は、マンU932試合、ウェールズ代表64試合、英国代表4試合。
3月5日のマンチェスター・ユナイテッド対レアル・マドリーは、世界注目の“CLビッグゲーム”としては、今ひとつの内容に終わった。それでも、オールド・トラッフォードのピッチでは、「驚愕」の出来事が2つ目撃された。1つは、非難囂々だった、主審のナニ退場処分。そして、もう1つは、拍手喝采を浴びた、ライアン・ギグスのフルタイム出場だ。
マンUでのトップチームデビューから丸22年、39歳のMFは、自己通算1000試合出場の金字塔を打ち立てた。チームは敗れたが、個人としては、中盤でカットされたパス1本を除けば文句なしの90分。クリスティアーノ・ロナウド対策の一環として、馴染みの薄い右サイドで、SBのラファエウを守備面で援護しつつ、攻撃面でもチャンス供給に尽力した。
敵のオウンゴールによるチームの1点にも、ビルドアップで絡んでいる。少ないタッチから効果的なパスやクロスを放っていたように、肉体的なスピードの衰えは、頭の回転の速さで補われていた。
リオ・ファーディナンドもレアルとの2試合で「健在」をアピール。
前々週に、来夏までの1年間契約延長が発表された時点では、今季限りで「復活のない引退」を決めたと報じられている38歳のポール・スコールズと同じリーグ戦14試合出場に留まっていたこともあり、「さすがはマンU」と、生え抜きのベテランを大切にするクラブの姿勢の方に感心した。
ところがレアル戦試合後には、今年40歳でも引退など考えられず、「さすがはギグス」と実感させられた。退場者を出した10分後、自陣ゴール前での守備を終えて戻りながら、スタンドの「12人目」に更なる声援を喚起していた姿を、その数分前に、自身も同じ行動に出たアレックス・ファーガソン監督は、さぞかし頼もしく思ったに違いない。
レアルとの2試合は、リオ・ファーディナンドにとっても、「健在」を世に知らしめる舞台となった。34歳のCBに全盛期の機動力はないが、展開を読んで動き出しを早めることで、危機に対処できるようになっている。
敵地での第1レグ、ゴール前に侵入したロナウドのシュートを未然に防いだ場面が、その好例だ。現契約が今季末で満了することから、昨年末の時点では古巣のウェストハムなどへの移籍説も流れたが、レアルとの第2レグを迎える頃には、指揮官が「契約合意の線が濃厚だ」と、1月に提示した1年延長交渉を押し進める意思を公言。ファーディナンド評も、「戦力の1人」から「ここ一番での信頼度は抜群」へと高まった。