WBC 侍ジャパンの道BACK NUMBER
主役は打線や投手じゃなく実は足!?
壮行試合で見えた侍ジャパンの戦法。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2013/02/25 11:55
豪州との壮行試合第1戦目で逆転3ランを放った相川(右)を迎えるキャプテンの阿部。打線が弱いという評判を払しょくするかのような、まさに起死回生の一発だった。
少ない安打を確実に得点にするためのデータが重要。
最初に書いたように国際試合では、初対戦の投手がほとんどで投手有利なため、そうそう打線を計算できない。そうなると少ない安打をどう得点に結びつけるか、相手のミスにどうつけ込むかが、試合の明暗を分ける大きなポイントになるはずだ。
「1死三塁という状況をどう作れるか」
こう語っていたのは日本代表の橋上秀樹戦略コーチだった。
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「そのためにバント、バントでは2死三塁ですから。バントに何をどうからめるか。そうなると盗塁とか走塁面を、いかにミスなく着実にやり遂げるかが大切になってくる」
今回の日本代表チームの一つの特長が、どこからでも足をからませた攻撃が出来る点にある。その特長を選手が意識して、試合の中で確実に動けていた。
本番になれば相手投手のけん制のクセや、その他の様々なデータも揃って、むしろ走塁面ではさらに仕掛けるチャンスは増えてくる。
その準備をきちっとできたことは、豪州との壮行試合の大きな手応えだったように映った。
第1戦で2度もあったバッテリーエラーは、本番だと命取りに!?
相手のミスに足を絡めてどう点を取るか。
それが日本野球の一つのテーマだとすると、逆に言えば相手にそういう野球をやらせないというのも今度は守りのテーマになるはずだ。
その点で少し気になったのが初戦で2つのバッテリーエラーがあったことだった。
この2つのワイルドピッチは3番手で投げた能見篤史のときで、いずれもフォークが捕手の前で大きくワンバウンドしたものだった。
「審判によってアウトコースのゾーンがかなり違うので、投手陣にはコースよりもボールの高低、低めに投げることを徹底させたい」
こう語っていたのは与田剛投手コーチだが、滑るメジャー球の場合に、低めを意識すると怖いのがこの暴投になる。
「滑るから強く握る。強く握ると今度は逆に引っかかりすぎてとんでもないボールになってしまう。メジャー球の難しいところは抜けるボールと引っかかるボールの両方があることなんです」
同コーチの説明だった。
この二つの暴投は明らかにフォークが抜けずに引っかかってワンバウンドしたものだったが、普段の能見なら考えられないようなボールだったのだ。