日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER

中山雅史の魂の継承者、岡崎慎司。
稀代のストライカーをつなぐ共通点。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/02/18 10:30

中山雅史の魂の継承者、岡崎慎司。稀代のストライカーをつなぐ共通点。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2月6日のラトビア戦で岡崎は2得点を決め、日本代表史上最速でAマッチ30得点に到達。まだ26歳、どこまで記録を伸ばせるか。

大敗を喫したブラジル戦に岡崎が出場していたら……。

 そして時を経て、イビチャ・オシムからバトンを受けて再び代表監督に就任した岡田は岡崎に目を留めた。中山の姿をだぶらせるように。

 最前線に置く1トップとして重用。だが結局、南アフリカ本大会で控えに回すことになるのだが、岡崎に対する期待値は極めて高かった。

「岡崎も同じようにスイッチャー。多少無理してでも行ってくれる。オフサイドになろうともね。それによって空いたスペースに次のヤツが走りこんで、チームに動きが出てくる。ゴンと共通するものは感じていたよ。今のストライカーはみんなうまくなっているけど、逆にこういう泥臭いタイプが少なくなってきた」

 希少かつ、貴重なタイプ。

 そんな岡崎の存在感を思い知らされたのが、昨秋の欧州遠征である。

 0-4で大敗を喫したあのブラジル戦にもし岡崎がいたら。そう思えた試合内容だった。後半はほぼ一方的。チーム全体として裏を狙うプレーがなく、カウンターの餌食になり続けた。結果論ではあるが、岡崎が果敢に裏に飛び出して相手センターバックを後ろ向きで対応させるシーンが増えれば、そして彼の前からの守備で相手の勢いをスローダウンさせられれば、悪い流れのままズルズルと失点を重ねなかったのかもしれない、と。

 誰も流れを変えるきっかけを生み出せず、誰もスイッチを押す役割を果たせなかった。それが後半の戦いで突きつけられた事実のひとつだった。

ドイツに渡って泥臭さと度胸により一層の磨きをかけた。

 泥臭さのなかに、度胸がある。この度胸こそがスイッチャーとしての大事な要素なのかもしれない。

 岡崎の座右の銘は「一生、ダイビングヘッド」だ。

 ここには「ニアのボールにも平気で飛びこんでいく」という意思も見えてくる。中山が左右のクロスに対してニアに飛び込んでいったように、岡崎もまた気後れすることなく飛び込んでいく。ただこれは言うまでもなく簡単ではない。

 ニアのボールに飛び込むにはかなりの勇気がいる。当然、ケガする可能性が多少なりとも膨らんでくる。しかしニアに向かうことによって初めてファーが活きてくる。

 果敢に向かえば、味方を鼓舞することもできる。ゴールの可能性も広がる。相手としてもニアに飛び込まれるのは嫌なこと。駆け引きでも優位に立ち、それが流れを引き寄せることにもつながってくる。

 泥臭く、強く。

 ドイツに渡った岡崎は、そこにより一層の磨きをかけてきた。体が一層強くなり、迫力も伴ってきた。ラトビア戦の先制点もサイズの大きなセンターバックに当たり負けせず、ボールに先に触ってゴールを奪っている。

 そしてまた裏への飛び出しからスペースをつくり、日本への流れをつくった意味でも貢献度は高かった。彼がスイッチャーとして、スケールアップしているのも見てとれた。

【次ページ】 岡崎に求められるのは精神的支柱としての存在感。

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