濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
日沖発は関節技が上手すぎて負けた!?
日本式MMAがUFCで勝てない理由。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byGetty Images
posted2013/02/01 10:30
1月26日、シカゴで行なわれた「UFC on FOX『Johnson vs. Dodson』」。日沖発(写真右)は、クレイ・グイダと対戦し判定2-1で敗れた。グイダは学生時代、レスリングの全米チャンピオンに輝いたこともあり、2011年のUFC125では五味隆典を下している。
スポーツの難しさの一つは、さまざまな要素で勝ち負けが決まるということだ。とりわけ、格闘技はさまざまなルールが存在する。ルールが違えば必要とされる闘い方、さらには判定基準も変わる。選手はその中で闘い、勝たなくてはならない。
1月26日に開催されたUFCシカゴ大会。日沖発はクレイ・グイダに判定2-1で敗れた。これでUFC戦績は2勝2敗に。日本では修斗とSRC(戦極)のタイトルを獲得したトップファイターの日沖だが、UFCでは思うように勝てていない。
鮮やかなサブミッションでの“判定負け”。
グイダ戦、日沖は打撃で主導権を握りかけた。
激しいステップを繰り返すグイダに的確なパンチ。クリーンヒットの数では上回っているように見えた。グラウンドでは下からのアームロックや三角絞めにトライ。オールラウンダーの日沖らしい、鮮やかな仕掛けだった。
おそらく、舞台が10年前のPRIDEであれば、文句なしで日沖の勝ちだっただろう。だが実際にはスプリット・デシジョンとなり、勝ったのはグイダだった。UFCを見慣れていない人にとっては“おかしな判定”だったかもしれない。だが、UFCではこういうことが充分にありうるのだ。
UFCで勝敗を分ける、テイクダウンとトップキープ。
勝敗を分けたのは、テイクダウンだ。
日沖は下からのサブミッションを何度も仕掛けたが、その前の攻防でグイダがタックルに成功している。さらに日沖の“一本勝ち狙い”を潰し、細かくパンチ。
UFCの判定では、このテイクダウンと上のポジションを取り続けること(トップキープ)が重視される。
日沖が見せた下からのサブミッションによる攻勢点よりも、タックルを決め、トップをキープすることのほうが現在のMMAでは評価が高いのだ。
グイダのテイクダウンとトップキープが“王道”であり、日沖の下からの仕掛けは“奇襲”の類。どちらも同じくらい攻めていても、ジャッジが支持したのはグイダの“王道”だったのである。もしかしたら、関節技の極め合いならばグイダより日沖のほうが強いのかもしれない。しかし、それは現代MMAでの勝敗には直結しないのだ。
UFCではヒジ打ちも認められるため、グラウンドで上になることの意味は大きい。一発で勝負を決めることのできる絞め・関節技は、そのぶん成功させるのも難しい。だがパンチやヒジは、コツコツと当て続ければ確実にダメージを与えることができる。