濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
8時間に及んだ大晦日興行で見えた、
日本格闘技界と“世界”との距離感。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2013/01/17 10:30
『DREAM.18&GLORY 4~大晦日SPECIAL 2012』のGLORY GRAND SLAM HEAVYWEIGHTで初優勝したセミー・シュルト。かつてはセーム・シュルトの名でK-1で活躍し、4度のGP優勝を果たすなど、立ち技ヘビー級王座に君臨している。
昨年大晦日、さいたまスーパーアリーナで開催された『DREAM.18&GLORY 4~大晦日SPECIAL 2012』は、約8時間の超ロング興行だった。
第1部が総合格闘技イベントDREAM、第2部がキックボクシングイベントGLORYの合体興行。トータル27試合という凄まじいボリュームである。ここまで試合数が多いと、普通は集中力が続かないものだ。だが、今大会に関してはさほど長さを感じることなく、最後まで集中して見ることができた。全8試合、演出も含めコンパクトにまとまっていたDREAMはもちろん、19試合行なわれたGLORYも“中だるみ”はなかった。
対世界ではっきりした日本人MMAファイターの力の差。
DREAMでは、あらためて“対世界”というテーマが浮かび上がった。
日本のトップ選手である北岡悟がウィル・ブルックスに、高谷裕之がジョージ・カラカニヤンに敗北。ブルックスもカラカニヤンも、アメリカでは“ホープ”といったランクの選手。彼らに“MMAの首都”のパワーを見せつけられた形だ。
メインでは、川尻達也が小見川道大に完勝。大会翌日の会見で、川尻は「DREAM、ONE FC、ベラトールの三冠王になりたい」とコメントしている。ONE FCはシンガポールの、ベラトールはアメリカのケージ大会で、DREAMと提携している。海外で勝つことでDREAMのブランドバリューを上げ、日本の格闘技を盛り上げるのが川尻の狙いだ。MMAファイター、MMAイベントは世界、とりわけアメリカを絶対に無視できない。そのことを川尻はよく分かっている。
複雑ながらも、間延びしないトーナメントのルール。
GLORYのメイン企画は、16名参加の世界トーナメント。ここで採用されたのが、『BEST of 3』と呼ばれる試合形式だ。
3ラウンド制だが、2ラウンドまでにポイント差があればそこで試合終了、同点の場合のみ3ラウンドに突入する独自のルール。選手は序盤からアグレッシブに攻撃し、そのことでKOも多くなった。2ラウンドで終わることで苛酷なトーナメントを闘う選手のダメージは軽減され、見ている側も気が抜けない。
夜11時をすぎ、新年が近づく中で優勝を収めたのは、K-1ワールドGPでも4度の優勝を誇るセミー・シュルトだった。
212cmの長身から繰り出す攻撃はすべてが規格外。だが、そんなシュルトに準決勝で果敢に打ち合いを挑んだグーカン・サキや、優勝候補の一人レミー・ボンヤスキーを2回戦で下したジャマール・ベン・サディックも大いに株を上げたと言える。