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ジンクス通りに敗れ去ったタイガース。
ワールドシリーズの隠れた法則とは? 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2012/11/02 10:31

ジンクス通りに敗れ去ったタイガース。ワールドシリーズの隠れた法則とは?<Number Web> photograph by Getty Images

ワールドシリーズまでは圧倒的な戦力で勝ち上がってきたタイガースのジム・リーランド監督。1997年に創設まもないフロリダ・マーリンズの監督としてワールドシリーズを制覇した名監督も、2006年に続き、今シーズンもタイガースを世界一に導くことはかなわなかった。

リーグ優勝決定シリーズでスイープすると勝てない!?

 実はこの現象、タイガースに限ったことではない。

 これまでリーグ優勝決定シリーズでスイープしてきたチームは、どういう訳かワールドシリーズで相当に分が悪いのだ。

 1985年にリーグ優勝決定シリーズで7試合制(それ以前は5試合制)が導入されて以降、タイガースを含め4チームが6回もリーグ優勝決定シリーズでスイープしている。しかし、その中でワールドシリーズに勝利できたのは'95年のブレーブスだけなのである。しかも負け方もスイープ3回に1勝4敗が2回と、いずれも一方的な展開で敗れている。

 ここまで来ると、もう“ジンクス”と呼んでしまってもいいのではないかと思えるほどだ。

ジンクスにハマったどのチームも、敗因は深刻な打撃不振。

 そこで興味本位も手伝って、リーグ優勝決定シリーズでスイープした4チーム(6回)のワールドシリーズ、リーグ優勝決定シリーズ、レギュラーシーズンのチーム打率、防御率を比較してみたので表をご覧頂きたい。

●リーグ優勝決定シリーズでスイープした4チーム(6回)のチーム打率とチーム防御率
                                                                                     ※( )内はワールドシリーズの成績
  ワールドシリーズ リーグ優勝決定シリーズ レギュラーシーズン
1988年
アスレチックス
(1勝4敗)
打率 .177 .299 .263
防御率 3.92 2.00 3.44
1990年
アスレチックス
(0勝4敗)
打率 .207 .299 .254
防御率 4.08 1.00 3.18
1995年
ブレーブス
(4勝2敗)
打率 .244 .282 .250
防御率 2.67 1.15 3.44
2006年
タイガース
(1勝4敗)
打率 .199 .285 .274
防御率 3.00 2.25 3.44
2007年
ロッキーズ
(0勝4敗)
打率 .218 .222 .280
防御率 7.68 1.89 4.32
2012年
タイガース
(0勝4敗)
打率 .159 .291 .268
防御率 4.11 1.38 3.77

 前述した通り'95年のブレーブス以外のチームはワールドシリーズで惨敗しているので、レギュラーシーズンやリーグ優勝決定シリーズと成績の差があって当然だ。このデータだけで詳細部分まで分析するのはさすがに無理がある。

 だが、'07年のロッキーズが投手陣の崩壊でワールドシリーズに敗れた以外、基本的には打撃不振がワールドシリーズの敗因になっていることは読み取れるだろう。

 リーグ優勝決定シリーズでは投打ともに圧倒的な成績を残している一方で、ワールドシリーズでは投手陣がレギュラーシーズンに近い成績を残している。これとは対照的に、打撃陣はほとんど1割台あたりにまで沈んでしまっている。

 短期決戦は投手力で決まるというのは決して間違いではないと思うが、野球は点を奪わなければ勝てない競技でもあるわけだ。

【次ページ】 ワールドシリーズで2度も辛酸をなめた名将たち。

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