MLB東奔西走BACK NUMBER
ジンクス通りに敗れ去ったタイガース。
ワールドシリーズの隠れた法則とは?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/11/02 10:31
ワールドシリーズまでは圧倒的な戦力で勝ち上がってきたタイガースのジム・リーランド監督。1997年に創設まもないフロリダ・マーリンズの監督としてワールドシリーズを制覇した名監督も、2006年に続き、今シーズンもタイガースを世界一に導くことはかなわなかった。
“歴史は繰り返される”
これは野球界においても決して例外ではないようだ。
2012年のワールドシリーズは、サンフランシスコ・ジャイアンツがデトロイト・タイガースをスイープ(4戦全勝)するという一方的な展開で幕を閉じた。もちろん誰ひとりとしてこんなシリーズを予想してはいなかったはずだ。
しかし、タイガースは同じ“歴史”を繰り返してしまったのだ。
今年のワールドシリーズには個人的にあまり興味を抱いていなかった。というのも、プレーオフ開始前から大半が予想していた通りの2チームの対戦になってしまい、ちょっと拍子抜けした感があったからだ。さらにタイガース有利という大方のシリーズ予想に自分も納得させられてしまい、面白い展開を期待できそうもなかったというのもある。それでもただ1つだけ、“気になること”はあった。
前評判が圧倒的に高かった、2枚看板擁するタイガース。
両チームの戦力を比較すれば誰の目から見ても、タイガースが一枚上をいっていた。
特に先発投手陣に関しては両チームの差は歴然としていた。ワイルドカード決定戦を取材していた際に、チッパー・ジョーンズが「自分はプレーオフを制するのはパワーで圧倒する投球だと思う」と話してくれたが、MLBでは「短期決戦は打撃力以上に投手力で決まる」という考え方が一般的になっているのである。
その点タイガースは、昨年サイ・ヤング賞、MVPをダブル受賞したジャスティン・バーランダーとマックス・シャーザーという2枚看板が揃っている上、プレーオフに入りダグ・フィスター、アニバル・サンチェス両投手もが、その絶好調ぶりを見せつけていたのだ。
一方のジャイアンツは2008年から2年連続サイ・ヤング賞受賞のティム・リンスカムがシーズンを通して低迷を続け、プレーオフでは中継ぎに回った。
もう1人のエース格だったマット・ケインは今年6月に完全試合を達成するほどの活躍を見せていたが、プレーオフに入った途端、レギュラーシーズンにみせていた安定感が影を潜めてしまっていた。
どう考えてもタイガースに死角はなかったはずだった。