MLB東奔西走BACK NUMBER
ジンクス通りに敗れ去ったタイガース。
ワールドシリーズの隠れた法則とは?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/11/02 10:31
ワールドシリーズまでは圧倒的な戦力で勝ち上がってきたタイガースのジム・リーランド監督。1997年に創設まもないフロリダ・マーリンズの監督としてワールドシリーズを制覇した名監督も、2006年に続き、今シーズンもタイガースを世界一に導くことはかなわなかった。
バーランダーを攻略され、再現された2006年の悪夢。
しかし、その予想はあっさり覆った。
バーランダーを見事に攻略し、ジャイアンツが第1戦を完勝してしまったのだ。
この時点で、頭の隅にあった“気になること”が一挙に広がり始めた。それは……これは2006年の再現になるのではないか、ということだった。
そんな理由もあって、第2戦以降からはタイガースの戦いぶりに特に注目していた。
'06年といえばタイガースが前回、ワールドシリーズに出場したシーズンである。この時もタイガース有利といわれながらも、カージナルスに4勝1敗で敗れ去っている。そして今シーズンのタイガースにも、'06年と同じ1つの共通項が存在していた。
それは、いずれもリーグ優勝決定シリーズをスイープで勝ち上がり、ワールドシリーズ開幕まで時間が空いてしまった、ということである。
この6年間にチームの顔触れが変わっても、当時と同様に今もジム・リーランド監督は指揮をとり続けている。監督自身は'06年の失敗を教訓にシリーズに臨んでいただろう。だが結局、第1戦でジャイアンツに傾いた流れを一度も引き戻すことができぬまま、敗れ去った。
「今でも自分たちの先発投手陣に自信を抱いている」
「自分たちが(優勝決定シリーズで)ヤンキースをスイープするとは考えていなかったし、今回ジャイアンツにスイープされるとも思っていなかった。ジャイアンツが王者に相応しい戦いをしたというのが一番だ。自分たちが打てず、得点できなかった。もちろん言い訳するつもりはない。ただ今日(第4戦)の試合に勝ち、第5戦でバーランダーが投げていれば、展開は変わっていたはずだ。私は今でも自分たちの先発投手陣に自信を抱いている」
シリーズ後のリーランド監督の言葉を聞いても、その端々から自分たち本来の野球ができなかった無念さが伝わってくる。
いくら極端な不振に陥ったとはいえ、レギュラーシーズンからずっと信頼を寄せていた(45年ぶりにメジャー三冠王を獲得した)ミゲル・カブレラとプリンス・フィールダーを軸にした強力打線。これにテコ入れすることは、かなりのリスクを伴い、指揮官として抵抗があったに違いない。