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タイガースの逆襲とGMの功績。
~ワールドシリーズ進出の立役者~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/10/20 08:01
ヤンキースを4タテし、ワールドシリーズ進出を決めたタイガース。1984年以来の世界一を目指す。
喉もと過ぎれば熱さを忘れる、ということわざはどうもあてにならない。
2012年のポストシーズン・ゲームを見ながら、私はそんな感想を抱いている。
なによりも、ディヴィジョン・シリーズ(DS)の白熱が尾を引いている。4つのカードがすべて最終戦までもつれこんだのは、ワイルドカード元年の1995年以降、史上初めてのことだった。
つまり、DSの合計が20試合。なかには1点差ゲームが8試合もあった。
というだけでも十分にスリリングなのに、派手な逆転劇やきわどい接戦がこれに輪をかけている。
たとえば、本拠地で2連敗したあと、敵地に乗り込んでレッズに3連勝したジャイアンツの例があった。あるいは、第5戦の3回裏まで0対6とリードされていながら、じわじわと反撃を重ね、ナショナルズを9対7とうっちゃったカーディナルスの粘り強さも思い出される。まだある。敵地で連敗しながら、本拠地に戻ったあとタイガースをあと一歩のところまで追いつめたアスレティックスの善戦。さらには、1点差ゲームを3試合も展開した(第1戦も8回終了までは2対2の同点だった)ヤンキースとオリオールズのシーソー・ゲーム。
並べていくときりがないが、残念だったのは、このディヴィジョン・シリーズで伏兵3球団(ナショナルズ、アスレティックス、オリオールズ)が枕を並べて討ち死にしてしまったことだ。開幕前、下馬評のあまり高くなかった3球団だけに、ここは1チームだけでも勝ち残り、つぎのステージに進んでもらいたいところだった。
勝率5割を切っていた7月から猛烈な逆襲を始めたタイガース。
まあ、死んだ児の歳を数えても仕方がない。勝ち残った4球団を見て面白いのは、レギュラーシーズンでともに88勝しかできなかったタイガースとカーディナルスが、例年どおりの勝負強さを発揮して、撤収の気配をまったく漂わせていないことだ。
わけても注目は、タイガースではないか。
2012年、タイガースは、ローラーコースターさながらのアップダウンを経験してきた。
まず開幕前、タイガースはア・リーグ中地区の圧倒的な本命だった。球団には最強のエース、ジャスティン・ヴァーランダーがいた。ミゲル・カブレラとプリンス・フィルダーの3・4番コンビは、大リーグ最強のパワー・デュオと見なされていた。加えて、やや歳はとったが、監督のジム・リーランドが味のある采配を振るっている。地区全体のレベルが低いだけに、タイガースのプレーオフ進出はまず動かないだろうと思われていた。
ところが、タイガースは苦戦した。7月に入った時点での勝率は5割以下。140試合を経過しても、首位ホワイトソックスとの差は3ゲーム。これはちょっと、と思った矢先、彼らは猛烈な逆襲を開始した。