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サムライ達はなぜフランスに勝てた?
決勝点に出た“全員サッカー”の意識。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/10/15 12:25
「自分と(長友)佑都に加えて、ボランチ、トップが絡んだりしてもっとチームで攻守に連動したプレーをしないといけないと思っています」と次戦でのさらなる成長を語った香川。
「サイドで起点をつくり仕掛けていこうと指示を出した」
前半は“借りてきた猫”に近かった。
プレスがはまらず、押し込まれ、シュートを浴び続けた。セットプレーではヒヤリとさせられた。相手のプレッシャーが強いこともあってパスミスも多く、腰の引けた感じはどうしても否めなかった。「序盤はフランスの名前にびびったのか、日本らしくないミスもあった」と勝利の立役者となった今野もそう振り返った。
アルベルト・ザッケローニも「前半は押し込まれてシャイなところが出てしまった」と試合後の会見で語ったが、強調したのはそのあとの言葉。
「たとえ相手が押し込んでくる状況であっても相手ゴールの近くで仕掛けないといけないし、裏を意識した動きで相手の重心を低くするような戦い方をしなければならない。
日本のセンターバック2枚の今野、吉田(麻也)はもともとボランチだったし、サイドバックの2人は(攻撃力が高いので)ウイングと呼んでもいい。このチームは受けに回るのではなく、仕掛けることで良さが出てくると私は思っている。フランスは中盤の真ん中に厚みがあったので、サイドで起点をつくって仕掛けていこうと指示を出した。後半はそれができたんじゃないか」
香川をトップ下に置いての乾、清武の“セレッソトリオ”が活躍!
後半のピッチに“借りてきた猫”はいなくなっていた。試合中に立て直せるのがザックジャパンの良さだが、フランス相手にもそれができた。
前半は相手の3ボランチの一枚が流動的に動くことでマークが不徹底となり、センターバックから自由にボールを出されていたが、後半に入ってからはそこにプレッシャーをかけるなど守備を修正。自在に動かれていたボランチのマテュイディが早々に交代してくれたことも日本にとってはラッキーだった。
2人、3人で囲んで奪ってから素早くカウンターに移り、裏のスペースを狙うシーンが増えていく。後半途中に投入された細貝萌、乾貴士の動きがよく、日本が押し戻す展開になった。香川をトップ下に置いて乾、清武弘嗣の“セレッソトリオ”がスピーディーにつないでゴール前に迫るシーンもあり、シュートまでは持ち込めなくとも日本のやりたいことが少しずつ表現できるようになっていった。
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