日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザックジャパンは昔の代表と違う!?
大きく変わった欧州遠征の意味。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2012/10/10 10:30
ザックジャパン初の欧州遠征。12日に対戦するフランス代表とはこれまで1分4敗、16日に対戦するブラジル代表とは2分6敗で1度も勝ったことがない。練習で負傷・帰国した前田のためにも……奮闘を期待したい。
ザックジャパンとなって初の欧州遠征。12日にパリのサンドニでフランス代表と、16日にポーランドのヴロツワフでブラジル代表との2連戦を敢行する。
試合に臨むメンバー23人を見てみると、特に変わり映えはしない。
話題と言えばホッフェンハイムとの一戦で左足親指を骨折した岡崎慎司に代わってブンデスで3試合連続ゴールを決めるなど好調の乾貴士が招集され、宮市亮が2カ月ぶりに復帰したことぐらいだろうか。つまり欧州で試合をするからといって格段、欧州組が多いというわけでもない。
国内組10人、欧州組13人。しかしこれがスタメンともなると遠藤保仁、今野泰幸らなど国内組はごく少数にとどまる(前田遼一は練習中の怪我で急きょ佐藤寿人に交代してしまったし!)。欧州でプレーする選手がザックジャパンの多数を占めているという事実を、あらためて思い知ることができる。
これが前回の欧州遠征だと、どうだったか。
2009年9月、岡田ジャパンはオランダに遠征してオランダ、ガーナと対戦したが、メンバーの内訳を見ると国内組17人に比べ、欧州組は中村俊輔(エスパニョール)、稲本潤一(レンヌ)、長谷部誠(ヴォルフスブルク)、本田圭佑(VVVフェンロ)の4人にとどまっていた。このときの国内組の何人かが南アフリカW杯後に欧州移籍を果たすわけだが、いずれにしてもこの3年間で勢力図は大きく変わった。そしてこのことは欧州遠征の“意味合い”にも変化をもたらしている。
欧州遠征は世界レベルの「非日常」を体験する場だった。
これまでは「非日常」を体験することによって、世界レベルを知る時代が長く続いた。
11年半前、フランスに0-5で大敗した“サンドニの悲劇”では雨でスリッピーなピッチに苦しみ、個々の勝負でもかなわなかった。選手たちがそれぞれカルチャーショックを受けた形になった。トゥルシエジャパンもジーコジャパンも「非日常」を体験して克服するような成果を得たこともあったが、それが定着したとは言い難かった。
また3年前のオランダ遠征では前線からの激しいプレッシングなど岡田ジャパンのコンセプトを試して善戦したものの、個のパワーを防ぎ切れずに0-3の完敗に終わっている。普段味わえない世界水準と戦う「非日常」に触れることで、そこからW杯に向けてチーム、個で自分たちのレベルアップに落とし込む作業をやってきたのがこれまでの欧州遠征の在り方だった。
ただ強国にとっても日本との対戦は逆の意味で「非日常」であったように思う。
フレンドリーマッチの場合、相手が見知らぬ選手ばかりでは舐めてかかるケースが出てきても不思議ではない。そうなると日本が望むような成果を得られないこともあるというもの。これもまた「非日常」の難しさだと言えよう。