日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
「こんなに楽しい試合は久しぶり」
惨敗のブラジル戦で本田が見た風景。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/10/17 13:00
前半8分の本田のシュートなど、日本にも良いシーンがあった。シュート数の比較だとブラジル14本に対して日本10本。ブラジル代表のマノ・メネゼス監督は「日本は技術があり進歩を続けている。今日は戦術がうまくいってゴールを決められた」とコメントした。
冬を感じさせるポーランド・ヴロツワフで起こった大敗劇。
フランスに勝利して臨んだ欧州遠征第2戦、王国ブラジルとの一戦は0-4に終わった。
結果だけみれば“惨敗”である。だが、暗闇に包まれて先が見えなくなった絶望の敗れ方とは言い切れない。スタンドの記者席から試合を眺めてみると、筆者の目にはむしろ希望の光も映った。
1トップで先発しながらノーゴールに終わった本田圭佑は悔しさを隠さなかった。
「想定外です。まさか4点も取られるとは思わなかった。負けは負けに変わりないけど、ここまで(点差が)開くとはね」
だがその後でこうも言った。
「負け惜しみでも何でもなくて、点差ほどの差はないと感じた」と――。
本田の1トップで、想定通りの序盤の展開だったのだが……。
おそらく本田の心には特に前半の戦いが手ごたえとして残ったはずだ。
この日のザックジャパンは右ふくらはぎ痛でフランス戦を回避した本田を1トップに置き、中村憲剛をトップ下にして左に香川真司、右に清武弘嗣という前線の顔ぶれで臨んだ。
フランス戦と違ったのは1トップ(本田)とトップ下(中村)が守備の際、2トップのような形になってブラジルのボールの出しどころにプレッシャーをかけたこと。これが功を奏して全体的にコンパクトになり、高い位置でボールを獲って攻撃につなげることができた。
その象徴的なシーンが前半8分だった。
攻撃に転じると今野泰幸がドリブルで持ち上がり、遠藤保仁を経由してパスがスピーディーに展開され、最後は香川のラストパスに合わせた本田が強烈なシュートを放った。ブラジルの堅固な守備網を鮮やかに突破しただけに、ここで決めていれば展開は違っていたかもしれなかった。
個性派の集まりでありながら、チームの統制もとれていたブラジル。
ザックジャパンの眼前にいたのは、本気のブラジル代表だった。
W杯のホスト国である彼らは予選を免除されているため、親善試合であろうがモチベーションは恐ろしく高い。ネイマール、フッキ、オスカル、カカら魅力的な攻撃のタレントを擁し、個性派の集まりながら規律もしっかりと取れていた。サボらずに献身的に守備もするフッキの姿勢を見れば、それは一目瞭然だった。日本は得点にこそ結びつかなかったものの、そのブラジルをいきなり焦らせたわけである。
しかしブラジルはすぐさま反撃に出た。