日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
サムライ達はなぜフランスに勝てた?
決勝点に出た“全員サッカー”の意識。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/10/15 12:25
「自分と(長友)佑都に加えて、ボランチ、トップが絡んだりしてもっとチームで攻守に連動したプレーをしないといけないと思っています」と次戦でのさらなる成長を語った香川。
「サンドニの悲劇」はもはや過去になった。
レ・ブルーを後押しする地鳴りのような声援は、一瞬にして悲鳴に変わった。
10月12日に行われた親善試合、フランス戦。スコアレスで迎えた後半43分だった。フランスのCKを防ぐと、センターバックの今野泰幸がドリブルで持ち上がって独走。それに呼応するように次々とアウェイの白いユニフォームが駆け上がっていく。今野から右サイドを疾走する長友佑都へ。シュートコースを切るGKロリスの動きを見た長友から香川真司へ。鮮やかな“サンドニの一撃”に大観衆を飲み込んだスタッド・ド・フランスは静まり返った。
香川は力強く言った。
「(カウンターのとき)相手が戻るのも遅かったし、最後のチャンスだと思ってみんなが走った。右サイドにスペースがあって、(長友)佑都が相手を引きつけてくれました。練習どおりだし、みんなが焦らずにスペースを空けて、最後は佑都がパスを出してくれました」
全員で奪った決勝点。
背番号「10」のエースは、言外にそう言っていた。
「パスで崩してゴールを奪う」という理想形ではないが……。
フランス、ブラジルといった強豪国を相手に、ポゼッションで張り合いながらスピーディーなパスサッカーをどう展開していくか。
そこが今回の欧州遠征の大きなテーマではあるが、それをクリアできたわけではない。
最後はフランスが点を奪いに前がかりに来たところを逆手にとったカウンターがはまったという形であり、「パスで崩してゴールを奪う」という理想形に持ちこめなかったのは事実だ。
しかし、である。
以前よりも輝きが失せ(FIFAランク13位)、ケガ人が多くメンバーを大幅に入れ替えているとはいえ……相手はホームで戦うレ・ブルー。4日後にW杯予選の大一番スペイン戦を控えることで集中力も高まっていた。そのフランスを一発のカウンターで、それも全員がイメージを共有して仕留めた、その逞しさにこそライトを当てたい。ラッキーな一発というだけで片づけたくはない。