プレミアでの教訓第1弾となったジェルビーニョの得点。

　35分の3失点目は吉田にも責任がある。ジェルビーニョについて左に流れる段階では、相手CFの背中に手を触れて距離を意識しながら、マークできていたはずだった。だが、ミケル・アルテタにボールが渡ったところで、半身になり始めたジェルビーニョに対し、吉田の体は正面を向いたまま。背後への浮き球に反応した時点では、既にジェルビーニョとの間に2メートル弱の距離が生まれており、GKとの1対1に持ち込まれてしまった。一瞬でも集中力を欠けば致命傷になるという、プレミアでの教訓第1弾だ。

　しかしながら、この場面でも、ジェルビーニョを逃がした吉田の落ち度以上に、周囲の膠着状態が目についた。仮に、吉田がつき切ってシュートに持ち込ませなかったとしても、中央に折り返されていれば、失点は避けられなかっただろう。サウサンプトンの4バックは、右SBのナサニエル・クラインが、CBより低い位置に留まっており、オフサイドトラップをかけることができない状態だった。加えて、吉田の動きに対する周囲のフォローもなく、もう1人のCBであるジョゼ・フォンテとの間には、約10メートルの隙間が生じていた。ラインの手前にいた相手選手のうち、少なくとも2名は、このスペースからボックス内に侵入することが可能だった。

失点を避けるための動きが不足していたサウサンプトン守備陣。

　奇しくも、敵は今季リーグ戦4試合でわずか1失点という堅守が、アーセナルの黄金期を支えた守備陣“フェイマス・フォー”の再現と騒がれ始めている。往年のアーセナル4バックは、紐で繋がれているように完璧な連動が評判だったが、サウサンプトンの4バックが繋がれていたとすれば、それは、吉田が他のDFを無理やり引きずって動かすような繋がり方だった。2度目のオウンゴールで4点目を献上した37分も、エリア付近の頭数は充分だったが、失点を避けるための動きが不足していた。

　一方、攻撃面でのチームの意気込みは見上げたものだ。前半終了間際に、相手GKの落球に乗じて1点を返すと、ハーフタイム明けから、2列目の新戦力であるガストン・ラミレスを投入し、反撃の姿勢を強めてもいる。だが、守備面では怯んだままだった。

　例外は、頻繁に肩越しに背後を確認しながら動いていた吉田だ。

【次ページ】　間に合わないのを承知でシュートブロックを試みた吉田。