間に合わないのを承知でシュートブロックを試みた吉田。

　88分に6失点目を喫した場面では、中央から攻め上がってきた相手DFと同時に、背後でフリーになりかけていた相手FWも意識していたに違いない。結果、トーマス・ベルメーレンについていったが、二者択一を強いられたことによる微妙な動き出しの遅れから、プレッシャーをかけるのが精一杯だった。

　それでも、余裕のなかったベルメーレンのシュートは、ケルビン・デイビスの正面をついてセーブにあった。だが、ボランチのモルガン・シュネイデルランは、反応が鈍くリバウンドをクリアできず、こぼれ球を拾ったテオ・ウォルコットにネットを揺らされた。ウォルコットは、シュネイデルランとコンビを組む、ジェイムズ・ウォード・プラウズがケアできる位置にいたが、17歳のMFは、精神面の疲労で集中力が限界だったのかもしれない。ウォルコットのシュートにブロックを試みたのは、恐らく間に合わないことを承知で身を投げた吉田のみだった。

エバートン戦で、「フィジカル不足」という先入観の一蹴を。

　新CBが物怖じしていないことは、フィードを行う姿にも見て取れた。吉田は、投入直後から、シュネイデルランとパスを交わしながら、ビルドアップの起点となっていた。繋ぐサッカーを好むアドキンスが、獲得時の評価の1つに挙げた「足下の安定感」は、短時間のチーム練習でも周囲に認められているようだ。落ち着きを取り戻した後半には、前線にロングパスを届けたかと思えば、自ら敵陣内までボールを運ぶ姿も見られた。

　次節から、アストン・ビラ、エバートン、フルアム、ウェストハムと続く今後1カ月間のリーグ戦では、サウサンプトンがボールを支配する時間も増えると思われ、テクニックの確かな日本人DFが、持ち味を発揮する機会も増えることだろう。エバートンとの対戦では、エバートンの長身MFのマルアヌ・フェライニが、金星を上げた第1節のマンU戦と同様にFWとして起用される可能性もあり、吉田にとっては、イングランドのサッカーファンが日本人DFに対して抱いている、「フィジカル不足」という先入観を一蹴する絶好の機会でもある。

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