ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
五輪代表に残った選手、落ちた選手。
関塚ジャパンの選考基準を読み解く。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byMiki Sano
posted2012/07/03 11:45
サプライズ招集となったのが、身長187cmを誇るJ2東京V所属の大型FW、杉本健勇(けんゆう)。“五輪代表は1クラブ3人まで”という原則が代表選出への妨げとなる可能性を考え、清武、扇原、山口ら有力候補がひしめくC大阪を飛び出し、東京Vに期限付き移籍中。その判断が見事に実った。
レギュラーだった大迫は? 指宿はなぜ落選した?
本大会直前、イケイケの攻撃的サッカーでは世界に通用しないことを悟った岡田武史監督は、阿部勇樹をアンカーに置くシステムを採用し、守備を安定させることで活路を見出だした。
ロンドン五輪の初戦、スペイン相手に大敗は許されないので、南アフリカW杯と同様のシステムが採用されるかもしれない。それを裏付けるかのように、トゥーロンのエジプト戦、村松は守備的MFとして、中盤の底で掃除役に撤していた。いずせにせよ、守備に重心を置く戦い方になるのは、この人選からも窺える。
1トップは、トゥーロンでは国内組の大迫勇也、海外組の指宿洋史が入った。それまでレギュラーだった大迫は、初戦のトルコ戦、相手に力負けすることが多く、印象があまりにも悪かった。その後も途中出場したが、世界基準で考えると1トップとして物足りなさを感じたのだろう。
指宿は、大迫よりもチャンスをもらっていたが、スペインと日本が求めるサッカーのギャップに苦しんだ。
スペインでは流動的にプレーし、点を取ることだけを要求される。だが、日本は守備やポストプレーなど求められることが多い。「役割は増えても点を取るのは変わらない」と、本人は気丈に話をしていたが、守備もポストプレーも関塚監督が望むレベルには至っていなかったようだ。
唐突感のある杉本の選出と、ボランチの補強という問題。
そのため、杉本に白羽の矢が立ったのだが、この選出はやはり唐突な感が拭えない。
高さと強さのあるタイプは他にはいないという現状、さらに東京Vでの好調を考慮されての選出なのだろうが……。
3つ目のリズムを変えられるボランチだが、トゥーロンでは扇原が3試合にフル出場を果たした。
彼はボールは左右にちらせるが、プレッシャーが厳しくなるとミスが目立ち、失点で浮き足立ったチームを落ち着かせることができなかった。関塚監督は、おそらく、ここをOA枠で補おうとしたのだろう。
実際、アテネ、北京の両チームとも、OA枠では、チームを落ち着かせ流れを変えられる選手を選出してきた。アテネ五輪の時は小野伸二、北京五輪の時は病気で実現しなかったが、遠藤保仁である。