ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER

五輪代表に残った選手、落ちた選手。
関塚ジャパンの選考基準を読み解く。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byMiki Sano

posted2012/07/03 11:45

五輪代表に残った選手、落ちた選手。関塚ジャパンの選考基準を読み解く。<Number Web> photograph by Miki Sano

サプライズ招集となったのが、身長187cmを誇るJ2東京V所属の大型FW、杉本健勇(けんゆう)。“五輪代表は1クラブ3人まで”という原則が代表選出への妨げとなる可能性を考え、清武、扇原、山口ら有力候補がひしめくC大阪を飛び出し、東京Vに期限付き移籍中。その判断が見事に実った。

「香川とOA枠は協会で判断」(原博実強化委員長)

 関塚監督も、遠藤や中村憲剛ら苦しい時にチームを落ち着かせ、後方支援してくれるベテラン選手の招集を考えていたはずだ。

 だが、原博実強化委員長が「香川とOA枠は協会で判断させてもらった」と述べたように、一番重要なボランチのOA枠獲得を断念せざるをえなかったと推測できる。それゆえ、課題は残されたままになっている。

 その点も含めて、関塚監督のやるせない気持ちは、記者会見での言葉の端々から理解できた。

 3月にアジア最終予選を突破した時は「メダルを目指す」と力強く宣言していたが、今回は目標を聞かれてもメダルうんぬんという威勢のいいコメントは一切聞かれなかった。このメンバーの大部分を自ら選びながらも、メダル獲得そのものは非常に厳しいことを自覚しているのだろう。もっとも、トゥーロンで優勝したメキシコの強さを見れば楽観的ではいられない気持ちはよく分かる。 

いまだ“本気”を出した感が一度もない関塚ジャパンは覚醒するか?

 また、このチームは、「なでしこ」のように潤沢な準備期間を与えられて来ているわけではない。

 アテネ五輪の時は8試合ほどあった親善試合も、今回はトゥーロンを含めても6試合のみ。6月に予定されていた合宿もキャンセルになった。アジア大会優勝からスタートし、トゥーロンで崩壊したチームは、親善試合のニュージーランド戦(7月11日)がリスタートになる。

 スペイン戦(7月26日)まで、国内ではニュージーランド戦含めて4日間、英国入り後は10日間という準備期間しかない。そのため、多くはOAの2人が入る守備の構築に時間が割かれ、攻撃はトゥーロン同様に個々のアイデアと感覚に頼ることになるだろう。圧倒的に時間が足りない中、コミュニケーションを取り、コンビネーションを高め、どれだけ一体感を生み出していけるか。

 幸いなことに、彼らは自分たちの“本気”を、まだ見せたことがない。それがスペイン戦で初めて披露され、世界を驚かすものであって欲しいと願うばかりだ。

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