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なぜ昨季王者がここまで苦戦する!?
レイソルから消えた“やってやれ感”。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/05/12 08:01
連覇どころか、まさかの降格争い圏内にいるレイソル。王者として守りに入るのでなく、リスクを負って自ら仕掛けるスタイルを取り戻すことができるか。
昨季の成功と今季の現実との乖離が選手たちを惑わせる。
もう一つの壁は、昨季との比較による「理想と現実のギャップ」である。
もちろん選手たちは「昨季は昨季。今季は今季」と頭を切り替えている。しかし、一度手に入れた感覚を完全に切り離すのは容易ではない。結果が出ないほど周囲から比較論を持ち出され、一つひとつのプレーがうまくいかないほど、昨季との違いを感じて違和感を覚える。
故障者が相次ぐ展開も、その感覚を加速させた。
今季はここまで、菅野孝憲、近藤直也、橋本和、那須、そして大谷といった主力選手が故障による“短期的な離脱”を経験。
レアンドロ・ドミンゲスと酒井宏樹は、第7節神戸戦で早くも累積警告による出場停止を余儀なくされた。
故障者や出場停止が続出すると、当然、まだチームのスタイルに溶け込んで間もない新戦力にチャンスが回って来る。
手探り段階の新戦力に頼らざるを得ない負のスパイラル。
しかし、新戦力のリカルド・ロボがパスを受けようとするタイミングやポジショニングは、北嶋秀朗や田中順也、工藤壮人とは違う。左サイドバックの藤田優人のプレーエリアやスタイルは、橋本とは違う。
そうした微妙なズレをミーティングやトレーニングで修正する時間がないため、試合の中でお互いの呼吸を合わせるしかない。しかしこの微調整に、思いのほか時間が掛かっている印象がある。
昨季と比較して感じる「テンポの悪さ」は、おそらくそんなところに起因しているのだろう。少なくとも昨季、ピッチに立つ選手たちが“探りながらプレーしている”と感じることはなかった。迷いがあれば判断が遅れ、無意識のうちにプレーが消極的になるのも無理はない。ミスが失点に直結する展開が続けば、なおさらである。
そしてその消極性が、このチームの最大の強みにもネガティブな影響を及ぼしている。