セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
どん底まで墜ちた盟主インテル。
次期監督候補に挙がる名前とは?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/03/13 10:31
27節終了時点で7位のインテルは3位のラツィオと勝点差8。CLどころかEL圏内も危ない。
「インテルを変えるのはとても難しい」
声の主は今冬、指揮官の残留要請を振り切り、パリへ去って行ったMFチアゴ・モッタだ。古巣の惨状は予見していた、と突き放すように続けた。
「去年の夏、エトーの放出を知ったとき、“インテルの一時代が終わった”と感じた。チームが苦しいとき、ひとりでどうにかしてくれるのはエトーだけだったからね。俺も潮時だと思った。今の状況(3位ラツィオと勝ち点差11の26節終了時点)だとこの先、CL出場権獲得も厳しい」
何しろ、ラニエリ率いるインテルは1カ月以上も勝ち星に見放されていた(9日のキエーボ戦で久々に勝利したが)。ローマ相手に手も足も出ず、0-4で大敗したとき、立腹したモラッティ会長は試合後「このチームは凡庸でひどい」と吐き捨てた。
最低年俸レベルのノバーラとボローニャ相手にホームで0-1、0-3と連敗を喫すると、サン・シーロの観客も言葉を失い呆然とするしかなかった。雪中で4‐4の派手な撃ち合いを演じたパレルモ戦後FW陣は沈黙し、後半戦が始まって以降8試合連続の計17失点で守備陣も崩壊。クラブ史に残る低迷で、マルセイユとのCLベスト16ラウンドでも敗退の危機に瀕している。
7連勝に味をしめたラニエリの暴走が崩壊を招いた。
実際のところ、ラニエリはインテルの指揮官としての器ではなかった。
昨年末から年始にかけて、巻き返しを期待させた7連勝を挙げたとき、ラニエリはオーソドックスな4-4-2にこだわった。選手の特性を無視した無理な起用法の連続だったが「結果は出た」と味をしめた指揮官は、その後思いつくまま4-3-2-1、4-2-3-1、4-3-1-2、4-4-1-1、3-5-2……と“試合ごと”どころか“45分ごと”に布陣をいじり始める。司令塔スナイデルの起用法に一貫性がなく、前線の選手は混乱し、衰えの見える中盤と守備陣は「パスタ用のざるのようだ」と嘲笑のネタにされた。
ラニエリの監督としての命運はもう数週間も前に尽きている。修正を施そうにもチームを掌握する求心力はない。3冠メンバーにとって、彼はローマ監督時代“尊敬するモウリーニョに成す術なく敗れた指揮官”なのだ。