野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
さらば、愛しの山下書店東京ドーム店。
“文系野球の総本山”が閉店間近!!
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2012/01/20 10:30
山下書店東京ドーム店・岡野淳一店長の雄姿を店頭にて撮影。ちなみに、1月29日は東京ドームではイベントが無く、後楽園ホールでは、お昼からDDTプロレス、夜には新日本プロレスの興行が開催予定である
1月29日で閉店するのは巨人低迷も理由のひとつ!?
信じたくないと店に出向けば「閉店フェア中」の文字。レジ越しにはいつも在庫確認の2、3言ぐらいしか話したことがなかったロングヘアーの店長、名をば山下書店東京ドーム店・岡野淳一店長となむいいける。その店長とはじめてまともな言葉を交わした。
「ええ。今月の29日を最後に閉店します」
本当におしまいだった。
「閉店の理由はいろいろあるんですけどね。やはり売り上げが悪くなったということでしょうか。昨年は震災の影響で5月まで東京ドーム開催はなし、夏場はオールスターが仙台に、都市対抗が大阪に変更になり、秋は巨人がCS優勝を逃しました。格闘技の興行もコンサートも少なくなりましたし、遊園地の方も事故で営業停止と悪いことが重なりましたから……」
山下書店の売り上げの大半は東京ドームでの野球などイベント開催に頼るものが大きかった。A・猪木の引退試合では1日で1000万を売り上げたという伝説も残っているそうだが、野球では本拠地の巨人の成績が優勝した2009年以来ふるわず、関連本が一日で売り切れたというWBC優勝みたいな爆発もなく苦戦を強いられていたんだとか。
負けたチームのファンが巨人本を裏返して八つ当たり。
その他にも要因はあるが、野球でいえばやはり、かつてのドル箱カード・巨人×阪神戦での販売が思うように伸びなくなったことが大きかったそうだ。
「お客さんは来るけど、購買に結び付かないんですね。特に本拠地の巨人はやっぱり関連本も多いですし、負けると『巨人関連の本なんて見たくもない』と思うらしく、顕著に売り上げが悪くなるんです。阪神の場合は'03年に優勝してから一気に変わりましたね。優勝する前は勝っても負けても売れていたんですけど、優勝以後は負けてしまうと明らかに売れなくなりました。逆に広島や横浜のファンの方は試合結果に関係なく安定して売れるんですけどね。
それと、これはうちの特徴でしょうけど、熱狂的な野球ファンの方が負けたりすると大変で、相手チームの書籍を全部裏返しにしたり、勝手に自分のチームの本を上に置いて回ったり、挙句には『なんで巨人の本なんて置いているんだ!』って怒られたりもしましたね。そういう方は勝つと喜んで買って帰ってくれるんですけどね(笑)」
なるほど。野球も格闘技も興味のない岡野さんの前任者が「俺には無理だ」と店長をすぐに辞めたというのもよくわかる面倒くささ。さすがは文系野球の総本山というべきか。